2019年の夏季開催から降級制度が廃止された。以前であれば、夏季開催になると降級馬から馬券を組み立てる人が多かったはずだ。しかし、降級制度が廃止されたことで「馬券検討が難しくなった」「斤量が軽い3歳牝馬の活躍が増えるはず」といった声が多く聞こえてくる。
ここでは、降級制度があった過去5年と、降級制度が廃止された2019年を比較する。データは、夏季開催が始まってから2週分と少ないが、大まかな比較はできるはずだ。
【目次】
- 降級制度とは?
- 過去5年の降級馬の割合
- 過去5年の降級馬の勝率と単勝回収率
- 過去5年と2019年の馬齢別勝率の比較
- 降級制度が廃止されたことにより馬券は荒れるのか?
- 降級制度の廃止で斤量の軽い3歳牝馬は有利なのか?
- まとめ
降級制度とは?
日本ダービー翌週の夏季競馬の開始とともに、4歳馬の収得賞金を半分にしてクラスを移動させること。通常はクラスが1段階降級する(1000万→500万など)ことが多いが、重賞で好走した馬はオープン→1000万といった2段階降級することもある。なぜ降級制度ができたかというと、
- 1600万条件のレース施行数が少ないため除外される馬が多くなる
- 上級クラスで頭打ちになった馬の救済
といったことがある。
この降級制度が2019年の夏季開催から廃止された。
過去5年の降級馬の割合
※各年代の日本ダービー後の2週間分の古馬データ、降級が無いオープンクラスは除く
まず、いつものこの時期はどれくらいの降級馬が出走しているか確認したい。毎年、この時期の4歳馬は230頭前後が出走し、降級馬は100頭前後となっている。その中で、勝ち上がるのはだいたい18頭前後だ。
過去5年の降級馬の勝率と単勝回収率
※各年代の日本ダービー後の2週間分の古馬データ、降級が無いオープンクラスは除く
勝率は年によってバラつきがあるが、かなり高い数字となっている。2016年は人気薄が2頭勝ったため回収率が高くなっているが、他の年の回収率は70%前後。つまり、降級馬は人気の馬が順当に勝つことが多い。
過去5年と2019年の馬齢別勝率の比較
※各年代の日本ダービー後の2週間分の古馬データ、降級が無いオープンクラスは除く、6歳以上は勝つ馬が少ないため除く
では、ここから過去5年と2019年の比較をしてみたい。
2018年までは、3,4歳とも各年代で10%近くの勝率となっており、この時期は勢いのある3歳馬か4歳の降級馬が強い。
しかし、2019年になると3歳馬の勝率は変わらないが、4歳馬の勝率は6.3%と低くなっている。やはり降級制度が廃止されたことによって、4歳馬は厳しい戦いを強いられているようだ。
では、その勝ち鞍はどこにいったかというと、5歳馬だ。2018年までの5歳馬の勝率は2%台が多かったのに対して、2019年は6.1%となっている。データを細かく見てみると、実はダートの勝ち鞍が増えている。芝の勝率は他の年と大きく変わらないのに対して、ダートの勝率がかなり高くなった。
サラブレッドのピークは、一般的に4歳秋ごろと言われることが多い。降級廃止前であれば、この時期は成長期真っ只中の3歳馬と、これからピークを迎える4歳の降級馬が圧倒的に強かった。しかし、降級が廃止されたことにより、この時期に割を食っていた5歳馬が台頭したのではないかと思われる。
降級制度が廃止されたことにより馬券は荒れるのか?
※各年代の日本ダービー後の2週間分の古馬データ、降級が無いオープンクラスは除く
このデータは、降級制度が廃止されたことにより、馬券が荒れるかどうかを調べるために出したもの。単勝や3連単は超人気薄が勝ったり馬券圏内に入ると数字が極端になるのに対して、複勝はある程度安定している。そのため、複勝を選ばせてもらった。
古馬の平均複勝配当はだいたい330~360円くらいだが、2018年以前のこの時期は300円くらいと安め。しかし、2019年は397円とかなり高くなっている。
降級制度が廃止されたことによってガチガチのかたい配当が少なくなり、馬券が難しくなったためこのような結果になったと思われる。
降級制度の廃止で斤量の軽い3歳牝馬は有利なのか?
※各年代の日本ダービー後の2週間分の古馬データ、降級が無いオープンクラスは除く
競馬新聞やテレビだと、よく競馬記者が「降級廃止により斤量の軽い3歳牝馬が有利!!」と聞くことが多いと思う。そこで、3歳牝馬が実際に2019年は活躍しているのかを調べてみた。
出走数は2018年以前も2019年もたいして変わらない。
では勝率はというと、こちらもたいして変わらない。2018年以前は、2017年を除き10~15%位。これが2019年になると8%。おそらく誤差の範囲だろう。
降級制度が廃止されたことによって、斤量が軽い3歳牝馬が有利にはならない。
まとめ
ここまで降級制度の廃止の影響をデータで出してみた。
これにより分かったことは、
- やはり4歳降級馬は有利だった
- 降級廃止で5歳馬、特にダートの活躍が多くなった
- 降級廃止で2018年よりも馬券が荒れるようになった
- 降級廃止でも斤量が軽い3歳牝馬は有利ではない
となる。
これからの夏季開催の馬券は、勢いがあり勝率が高い3歳馬を中心にして、古馬は少し人気薄を狙うのがいいのかもしれない。