トラックバイアス&血統研究

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【ハービンジャー】種牡馬の特徴 芝の中長距離血統で小回り○(2023,7,12更新)

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イギリスで生まれ、調教され、そしてすべてのレースに出走したハービンジャー。キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英GⅠ)を史上最大着差のコースレコードで圧勝するものの、その後骨折したことで引退し、社台スタリオンステーションへ種牡馬入り。初年度産駒から重賞優勝馬を輩出し、ペルシアンナイトなどGⅠ馬も複数輩出している。

ここでは、ハービンジャー産駒の特徴を紹介する。

 

【目次】

 

 

 

 

 

血統

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Northern Dancer 4 × 4+5  Nearctic  5 × 5  Natalma 5+5 x 5

 

父・Dansili(ダンシリ、またはダンジリ)はGⅠを惜しくも優勝できなかった一流半のマイラー。しかし、産駒は母系からスタミナを取り入れ様々な距離のGⅠ馬を輩出し、2006年にはフランスのリーディングサイヤーにもなった名種牡馬。

母Penang Pearl(ペナンパール)はイギリスのリステッド競走の優勝実績がある。

母父Bering(ベーリング)は欧州に土着したNative Dancer(ネイティヴダンサー)系で、現役時はジョッケクルブ賞(仏GⅠ、フランスダービー)を優勝。産駒にはAmerican Post(仏2000ギニー/GⅠ)など、欧州で活躍するマイラーが多い。

同牝系からはクリンチャー(京都記念/GⅡ)などが輩出されているため、スタミナに富む牝系のようだ。

 

 

現役時代

イギリスで生まれ、イギリスで調教され、すべてのレースをイギリスで出走した。

デビューは遅く3歳4月。3戦目にGⅢを優勝したが、デビュー年はそれ以降は勝てなかった。

しかし4歳になると本格化。重賞を3連勝するとキングジョージ6世&クイーンエリザベスSに参戦。6頭立てと少頭数だったが、ワークフォース、ケープブランコなど豪華メンバーが揃う。

レースは道中4番手の外につけ、有力2頭をピッタリマーク。最後の直線へ向かうと他馬の手ごたえが怪しい中、ただ1頭だけ抜群の手ごたえ。

鞍上のオリビエ・ペリエが仕掛けるとあとは一人旅。ゴール直前は抑える余裕を見せつけ、後続に11馬身の大差をつけレースレコードで優勝し、初GⅠ制覇となった。

その後は次走へ向けて調教されていたが、左前脚を骨折。すぐに手術を行い一命を取りとめたが、引退することとなった。

引退後は社台グループへ売却され、社台スタリオンステーションで種牡馬入り。

現役時に勝利した距離はすべて2000m以上、重賞に限ればすべて2400m以上のため、売却額はそれほど高くなく数億円とされている。

 

 

主な勝ち鞍

  • キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英GⅠ/2010)

他、重賞4勝

 

 

代表産駒

  • 2012年産駒

・ベルーフ(京成杯・GⅢ/2015)

 

  • 2013年産駒

・ドレッドノータス(京都大賞典・GⅡ/2019、他重賞1勝)
・プロフェット(京成杯・GⅢ/2016)

・ヒーズインラブ(ダービー卿CT・GⅢ/2018)

 

  • 2014年産駒

・ペルシアンナイト(マイルCS・GⅠ/2017、他重賞1勝)

・モズカッチャン(エリザベス女王杯・GⅠ/2017、他重賞1勝)

・ディアドラ(ナッソーステークス・英GⅠ/2019、他GⅠ1勝、重賞3勝)

 

  • 2015年産駒

・ブラストワンピース(有馬記念・GⅠ/2018、他重賞4勝)

・ノームコア(香港カップ・GⅠ/2020、他GⅠ1勝、重賞3勝)

・ハービンマオ(関東オークス・GⅡ/2018)

 

  • 2016年産駒

・ニシノデイジー(札幌2歳S・GⅢ/2018、他重賞1勝、2023年6月末現在)

・フィリアプーラ(フェアリーS・GⅢ/2019)

・ハッピーアワー(ファルコンS・GⅢ/2019)

・サマーセント(マーメイドステークス・GⅢ/2020)

・ヒンドゥタイムズ(小倉大賞典・GⅢ/2023、2023年6月末現在)

 

  • 2019年産駒

・ナミュール(チューリップ賞・GⅡ/2022、2023年6月末現在)

・プレサージュリフト(クイーンカップ・GⅢ/2022、2023年6月末現在)

 

  • 2020年産駒

・エミュー(フラワーカップ・GⅢ/2023、2023年6月末現在)

・ファントムシーフ(共同通信杯・GⅢ/2023、2023年6月末現在)

 

 

 

 

 

ハービンジャー産駒の特徴

距離適正

若駒戦、芝

※2014,6,1~2023,5,31

 

古馬、芝

※2015,6,1~2023,5,31

 

若駒戦も古馬も、1500m以下は出走数が少なく勝率も低め。1600mから勝ち鞍が増え、1800mと2000mの勝ち鞍が一番多い。2200m以上はレース数が少ないため勝利数は少ないが、勝率は高い。

以上のことから中長距離血統である。重賞の優勝距離は1400~2500mだが、勝ち鞍の約4分の3が1800m以上となっている。

このような数字は、ステイゴールドやルーラーシップといった中長距離血統と同じ傾向である。

ちなみに、短距離を走る馬は440kg以下が多いという大まかな傾向がある。

 

ダート

※2014,6,1~2023,5,31

 

ダートはそもそも出走数も勝利数も少ないため、若駒戦と古馬のデータをまとめた。

やはり中長距離血統らしく1700m以下は勝利数も勝率も低い。1800mから勝利数が増える傾向だが、1800mの勝率を見ると3.8%なので特にこの距離が得意というわけではないようだ。

地方交流重賞の関東オークスでハービンマオが優勝しているが、基本的にはダートはどの距離も狙いにくい。

 

 

馬場適性

若駒戦、芝とダートの割合

※2014,6,1~2023,5,31

 

古馬、芝とダートの割合

※2015,6,1~2023,5,31

データ通り完全な芝血統である。ダートは空っ下手で、勝ち鞍は2勝クラスが2勝、3勝クラスが1勝のみ(地方交流重賞では優勝有り)。ダートはこなすことも厳しく、初ダートは母系がダートを強く伝える血統ではない限り買わないことをオススメする。

 

 

コース適正

芝、若駒戦

※2014,6,1~2023,5,31

 

芝、古馬

※2015,6,1~2023,5,31

 

勝利数が多いのは、

  • 1位 中山芝2000m 33勝
  • 2位 京都芝2000m 30勝
  • 3位 中京芝2000m 29勝
  • 4位 小倉芝2000m 28勝

となっている。

他も北海道が得意なため、小回り2000mで上がりが掛かるコースが得意である。

外回りや長い直線でも勝っているが、その多くは時計が掛かったり、ディープ産駒など決め手がある馬が実力を発揮できない特殊な条件が多い。

ハービンジャーはイギリスで走った種牡馬のため、荒れた馬場や、上がりが掛かる条件で狙いたい。

 

ダート

※2014,6,1~2023,5,31

 

ダートはそもそも出走数も勝利数も少ないため、若駒戦と古馬のデータをまとめた。

出走数自体が少ないため分析が難しいが、中山と阪神の数字が高く、福島、新潟、京都、小倉の数字が低いことから、直線に坂があるコースが得意なようだ。そのため、上がりが掛からないと厳しいのだろう。

 

 

 

 

 

牡牝の勝利数の違い

若駒戦

※2014,6,1~2023,5,31

古馬

※2015,6,1~2023,5,31

 

若駒戦も古馬も、おおむね平均的な数字となっている。スタミナやパワーがあるタイプは基本的に牡馬の方が優勢になることが多いのだが、ハービンジャー産駒は重賞の勝利数もほぼ変わらないため、どちらかの性別が優勢ということはない

 

 

クラス別勝利数

※2014,6,1~2023,5,31

 

基本的には、勝率は下級条件でも上級条件でもあまり変わらない傾向である。

ハービンジャー産駒は不器用な産駒が多く、ストライクゾーンが狭い。ハマった時は強さを見せるが、苦手な条件だとコロッと負ける。

クラスによって狙う条件を変えるよりも、産駒をよく観察して得意条件を見極めたい。

 

ダート

※2014,6,1~2023,5,31

 

 地方交流重賞では優勝する産駒も出ているが、中央だと現状は3勝クラスが上限である。

ダートを走る産駒は牝系からアシストがあるか、芝ではスピード不足なパワータイプが多い。出走してきた場合は、メンバーが相当手薄ではない限り狙わないほうが良いだろう。

 

 

母父の血統

若駒戦、芝

※2014,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

古馬、芝

※2015,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

ハービンジャーは日本に溢れているサンデーサイレンス系牝馬と配合するために輸入されたようなものなので、ハービンジャー産駒の芝の勝利数563勝中407勝、約72%の母父の血統がサンデー系となっている。

これは母母父やそれ以降は含まれていないため、おそらく5分の4ほどにサンデーサイレンスの血が入っていると思われる。

サンデー系を細かく見ると、フジキセキやディープインパクトなどは少し相性が良く、ステイゴールドやネオユニヴァースなどスタミナやパワーが売りの血統とは相性が悪い。ハービンジャー自身がスタミナやパワーがあるので、今後は素軽い血統との配合から上級馬が多く出てきそうだ。

他は、ヴァイスリージェント系(クロフネ、フレンチデピュティ親子等)以外のノーザンダンサー系との相性が悪い

これは、ハービンジャーの5代血統表内に4本もノーザンダンサー系の血が入っており、ノーザンダンサー系の血が濃くなりすぎるためだと思われる。

 

ダート

※2014,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

ダートもサンデーサイレンス系の勝利数が多いが、芝ほどではない。

基本的にはサンデーサイレンス系はダートが苦手なタイプが多いので、このようなデータになったのだと思われる。

 

 

成長度

※2014,6,1~2023,5,31

 

ハービンジャー自身は3歳にデビューし4歳に本格化したことから晩成型と思われることも多いが、データ的には意外と2歳の早い時期から走る。ただし短距離でガンガン走るようなタイプではなく、主戦場は1800m以上である。偶に牝馬や軽量馬が短距離で走るくらいだ。

3歳になるとかなり走り、ここまで3歳の勝ち鞍が多いのは珍しい。重賞の勝ち鞍32勝中18勝が3歳(2023年6月末)というデータもあるため、3歳が充実期なのだろう。

4歳になると勝ち鞍がガクンと減っているように見えるが、これは平均的である。3歳の勝ち鞍が多いだけで、4歳以上が少ないということはない。逆に4歳の勝率が高くなっていることから、晩成型だと思われる。今後は4歳以降の勝利が多くなってくるだろう。

 

 

ハービンジャー産駒の特徴まとめ

  • 2000mが得意な中長距離血統
  • ダートは空っ下手な完全なる芝血統
  • 小回りの芝2000mが得意
  • 母父ノーザンダンサー系(ヴァイスリージェント系以外)との相性が悪い
  • 牡牝の違いは標準的
  • 晩成型

 

個人的なハービンジャー産駒の感想

ハービンジャー産駒の得意なバイアスは、

  • 馬場    軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
  • 上がり   速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
  • 枠     超内、内、フラット、外、超外
  • 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
  • 前後    超前、前、展開次第、差し、超差し

と想定している。

欧州血統なので馬場は重い方が良い。馬場状態が良とやや重以上ではたいして数字の違いはないが、私が個人的に記録している馬場状態別だと「軽い、やや軽い」だとほとんど走らないが、「標準」以上になると走り始める。ただ、馬場が「重い」から走るというよりも、「軽い」馬場が苦手なのだろう。

上がりは遅ければ遅いほど走る。ハービンジャー産駒は上がり3ハロン33秒台のキレキレの脚を使う馬は少なく、上がり35秒以上が得意な馬が多い。小回りが得意というデータがあるように、スローのヨーイドンよりもある程度ペースが流れて上がりが掛かった方が良い。

枠は外枠有利の方が良い。というよりも内枠が苦手というデータがある。大飛びで緩急が苦手な産駒が多いため、内枠で揉まれるよりも外枠でノビノビと走った方が良いようだ。

直線の伸びは外伸びの方が良い。理由は枠と同じ。

前後はある程度差しが決まるバイアスの方が良い。中団から上がり3ハロン上位を記録して勝つ馬が多く、逃げ先行して押し切るようなタイプは少ない。

 

個人的にはテイエムオペラオー産駒やメイショウサムソン産駒のような欧州選手権距離血統、またはゴールドシップと同じような印象を持っている。

馬場が荒れたり柔らかくなったりして、ペースが流れて底力が必要な条件が得意な守備範囲だろう。

ただ、代表産駒にノームコア(ヴィクトリアマイル・GⅠ)がいるように、高速馬場にも対応する産駒もいる。おそらく母系が強く遺伝したためだと思われるので、例外には注意したい。

 

 

 

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