歴代最強スプリンターと称されることもあるロードカナロア。日本と香港のスプリントGⅠを5勝、マイルGⅠを1勝と、現役時代は短距離戦線でほぼ無敵状態だった。その実績をもって2014年から種牡馬入りすると、初年度産駒から牝馬三冠のアーモンドアイを輩出するなど大人気種牡馬となっている。
ここでは、ロードカナロア産駒の特徴を紹介する。
【目次】
血統
Northern Dancer 5+5 × 4
父は馬場、距離不問の活躍馬を多く輩出するスーパーサイヤー・キングカメハメハ。
母も馬場を問わず中央競馬の1400m以下で5勝を挙げたレディブラッサム。
母父は"種牡馬の種牡馬"として系統を確立しているStorm Cat(ストームキャット)。一般的にはパワーとスピードに優れた産駒を輩出することが多い。
半兄に六甲ステークス(OP、芝1600m)を優勝したロードバリオス(父・ブライアンズタイム)。
現役時代
デビューは2010年12月、小倉芝1200m。スタート良く逃げると馬なりのまま直線へ向かい、ムチを使わず6馬身差で圧勝。
その後は1600m、1400mを使うものの直線で伸びきれず惜敗したことから、陣営はスプリント戦線へ照準を向ける。
すると500万(現1勝クラス)、葵ステークス(OP)、京洛ステークス(OP)、京阪杯(GⅢ)、シルクロードステークス(GⅢ)と連勝。
その勢いのままに高松宮記念(GⅠ)へ挑戦し1番人気に支持されるも、カレンチャンの3着とスプリント戦で始めての敗北を喫する。
その後も中々勝ちきれないレースが続いたが、スプリンターズステークス(GⅠ)をレコードで快勝すると本格化。
香港スプリント(GⅠ)、高松宮記念(GⅠ)、マイルの安田記念(GⅠ)、スプリンターズステークスを優勝し、引退レースとして香港スプリントを選択する。
スタート良く好位外につけると、楽な手ごたえのまま直線へ。鞍上の岩田騎手がムチを入れると、他馬が失速する中1頭だけ違う脚でグングン加速。スプリント戦にも関わらず、2着に5馬身差、0.8秒の差をつけ有終の美を飾った。
このレースを最後に引退し2014年から社台スタリオンステーションに種牡馬入り。
すべてのレースで1600m以下に出走し、すべて3着以内とほぼパーフェクトな成績を残す。しかも優勝するときはすべて後続に0.1秒以上の差をつける快勝劇。負けるにしてもすべて0.1秒以内と、展開や枠順次第では勝ってもおかしくないレースだった。
主な勝ち鞍
- スプリンターズステークス(GⅠ/2012、2013)
- 香港スプリント(GⅠ/2012、2013)
- 高松宮記念(GⅠ/2013)
- 安田記念(GⅠ/2013)
他、重賞3勝
代表産駒
- 2015年産駒
・アーモンドアイ(牝馬三冠/2018、他GⅠ6勝、重賞1勝)
・ステルヴィオ(マイルチャンピオンシップ・GⅠ/2018、他重賞1勝)
・ダノンスマッシュ(香港スプリント・GⅠ/2020、他GⅠ1勝、重賞6勝)
- 2016年産駒
・サートゥルナーリア(皐月賞・GⅠ/2019、他GⅠ1勝、重賞2勝)
・ファストフォース(高松宮記念・GⅠ/2023、他重賞1勝)
・レッドルゼル(JBCスプリント・GⅠ/2021、他重賞2勝、2023年6月末現在)
- 2017年産駒
・Tagaloa(ブルーダイヤモンドステークス・豪GⅠ/2020、他GⅠ1勝)
・パンサラッサ(サウジカップ・GⅠ/2023、他GⅠ1勝、重賞2勝、2023年6月末現在)
- 2019年産駒
・ダノンスコーピオン(NHKマイルカップ・GⅠ/2023、他重賞1勝、2023年6月末現在)
ロードカナロア産駒の特徴
距離適正
若駒戦、芝
2017,6,1~2023,5,31
古馬、芝
2018,6,1~2023,5,31
若駒戦、古馬ともに1600m以下が中心。1800m以上は代表産駒のアーモンドアイやサートゥルナーリアが走っているが、基本的には短い産駒が多い。
若駒戦の勝利数は1600mが中心だが、古馬になると1200mが中心となる。これはおそらくだが、加齢とともに筋肉が硬くなるからだろう。
人間もそうだが、若いうちは体が柔らかいが、成長とともに筋肉がつき硬くなる。馬の場合は、一般的には筋肉がつくと体が硬くなり短い距離へとシフトすることが多いため、ロードカナロアはそのパターンではないかと推察している。
ただ、配合次第では距離適正が前後する。母父がサンデーサイレンス系か欧州のスタミナ系種牡馬との配合だと、1600m以上や場合によっては2000m以上を走る場面も目立つ。
母父が短距離種牡馬や米国スピード血統だと1200m以下が主戦場となる場合が多い。
以上のことから、配合次第で距離をこなせるスプリント血統と言える。
馬場適正はやや重の成績が抜群だ。良馬場の勝率は11.4%、重は8.5%、不良は9%に対し、やや重は12.9%とかなり高いため、少し渋った馬場が得意なようだ。
若駒戦、ダート
2017,6,1~2023,5,31
古馬、ダート
2018,6,1~2023,5,31
ダートも1600m以下が中心である。
1800mは出走数自体は多いが、勝利数は少なめ。1700m以上はほぼ4番人気以内でしか勝利していないため、基本的には長いのだろう。
1600m以下は勝率も単勝回収率も高い。特に1200mは100%を超えているため穴をあけることも多い。
ダートも短距離血統と思っていいだろう。
馬場適性
若駒戦、芝とダートの割合
2017,6,1~2023,5,31
古馬、芝とダートの割合
2018,6,1~2023,5,31
芝と比べるとダートは勝利数も勝率も低め。これはロードカナロアの母・レディブラッサムに要因があるのかもしれない。
ロードカナロアのきょうだいはサンデーサイレンス系以外の種牡馬をつけても芝で走ることが多い。レディブラッサムがロードカナロアに遺伝し、それがロードカナロア産駒に遺伝したのだろう。
ただ、ダートがダメという訳ではない。パンサラッサがサウジカップで、レッドルゼルがJBCスプリントで優勝するなど、ダートの一線級で活躍する産駒も多い。
父のキングカメハメハほど芝ダート兼用ではないが、配合次第ではダートのオープン馬が今後は多く出てくるだろう。ただ、基本は芝血統である。
コース適正
若駒戦、芝
2017,6,1~2023,5,31
古馬、芝
2018,6,1~2023,5,31
若駒戦と古馬で結構データが違うため分析が難しいが、おおまかに力が要る馬場が得意なようだ。
代表産駒のアーモンドアイやサートゥルナーリアなどのように良馬場の速い時計が得意な産駒が多いように感じるだろうが、距離適性でも書いたように意外と時計が掛かった方が良い。
ロードカナロア自身が香港スプリントで2連覇していて、しかも国内のレースよりも強い勝ち方をしたことから、産駒には時計が掛かる馬場や洋芝適正が遺伝しているのかもしれない。
以上のことから、時計が掛かる馬場、洋芝がメインの冬、北海道シリーズが得意ではないかと考えている。
若駒戦、ダート
2017,6,1~2023,5,31
古馬、ダート
2018,6,1~2023,5,31
中山、函館、小倉、新潟の成績が悪いため、コーナーがキツい競馬場が苦手なようだ。
勝利数が多いコースは、
- 東京ダ1400 25勝
- 中山ダ1200 22勝
- 中京ダ1400 21勝
- 東京ダ1600 21勝
- 阪神ダ1200 15勝
となっているので、コーナーが緩い競馬場が得意なようだ。
牡牝の勝利数の違い
若駒戦
2017,6,1~2023,5,31
古馬
2018,6,1~2023,5,31
若駒戦は牡馬も牝馬もあまり変わらないが、古馬になると牡馬の成績が良くなる。ただ、この位であれば平均的だろう。
基本的には、スピード型種牡馬は牝馬優勢、パワースタミナ型種牡馬は牡馬優勢になりやすい。ロードカナロアはスピードがあるため、若駒は牡馬も牝馬もあまり変わらないのだろうが、古馬になるとパワーがついてくるため牡馬の成績が良くなるのだろう。
クラス別勝利数
芝
2017,6,1~2023,5,31
ダート
2017,6,1~2023,5,31
芝は平均的に勝率が高めだが、特に2勝クラス以上の勝率が高い。
ロードカナロア産駒のレースを見ていると、スローペースで引っかかって不発→距離短縮で穴、という場面が印象に残る。一般的にはクラスが上がるとペースが速くなるので、このような数字になるのだろう。
ダートは上級条件の勝利は少ないが、上記の通り上級条件でも通用する産駒がポツポツと出始めている。おそらく今後は数字を伸ばしてくるものだと思われる。
母父の血統
若駒戦、芝
2017,6,1~2023,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
古馬、芝
2018,6,1~2023,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
ロードカナロア自身にはサンデーサイレンスの血が含まれていないので、サンデー系との相性は良いようだ。代表産駒のアーモンドアイの母父はサンデーサイレンス、サートゥルナーリアの母父はスペシャルウィークのように、母父サンデー系との間で大物産駒が多い。
次に目立つのがノーザンダンサー系だ。ステルヴィオの母父はファルブラヴ、京阪杯(GⅢ)を優勝したダノンスマッシュの母父はHard Spun(ハードスパン)となっている。ノーザンダンサー系の特徴はパワーがあることなので、パワーを補強する配合も良いようだ。
そして、大まかにだが母父短距離血統との相性があまり良くない。母父フジキセキの勝率は8.3%、タイキシャトルは勝率6.3%となっている。
ロードカナロアは現役時代に安田記念を優勝したが、産駒にはスタミナをあまり伝えないようだ。そのため、比較的スタミナやパワーがある血統との相性が良い。
若駒戦、ダート
2017,6,1~2023,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
古馬、ダート
2018,6,1~2023,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
データを見てみると勝利数はサンデーサイレンス系が一番多いが、勝率は非サンデー系が高めとなっている。
基本的にサンデー系は芝を走る能力を伝えるため芝馬になりやすい。ダートを走るためには米国系のパワーを補強しなければいけないため、このような数字になったと思われる。
成長度
2017,6,1~2023,5,31
ロードカナロアは短距離血統なので、2歳戦から能力全開の早熟血統……と思われるかもしれないが、意外とそうではない。
もちろん短距離血統で仕上がりも早いため2歳のうちに勝ち上がるケースが目立つ。しかし、その後は伸び悩み、休養に入り、本格化するのは3歳夏~秋になるケースが多い。
モデルになるのはダノンスマッシュだろう。2歳時は未勝利、もみじステークスを連勝したが、その後の重賞では通用せずNHKマイルカップ後に休養に入る。しかし、夏の函館の1600万条件(現3勝クラス)で復帰し勝利すると、一気に重賞で3連続連対したように本格化。その後も重賞戦線で常に好走するようになった。
まだ産駒が少ないが、今後は2歳~3歳前半のうちに初勝利→2,3ヶ月の休養→休み明けの3歳中盤~後半に本格派→4歳で重賞勝利、というパターンが多くなりそうだ。
以上のことから、仕上がりは早いが本質は晩成傾向と思われる。
ロードカナロア産駒の特徴まとめ
- マイル以下、古馬はスプリントが中心の短距離血統
- ダートも配合次第で走る
- 意外と芝は時計が掛かる馬場が得意
- ダートはコーナーが緩い競馬場が得意
- サンデー系との配合で芝馬が出やすい
- 母父ノーザンダンサー系などのパワータイプとの相性が良い
- 成長度は晩成気味
個人的なロードカナロア産駒の特徴
ロードカナロア産駒の芝の得意なバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場は少し渋ったほうがベストだが、速い時計にも対応できる。ただ、スローペースだと引っかかるのでペースは流れたほうが良い。
上がりは基本的には問わない。ピッチ走法でスタートがそこそこ上手いため、上がりは特に気にしないほうが良いかもしれない。母父サンデーサイレンス系との配合では速い上がりを使えることも多い。
枠は、スタートが上手いため問わないが、データでは気持ち外枠の方が勝率が高い。
直線の伸びも問わない。ピッチ走法で器用な産駒が多いため、スタートが上手い馬は内伸びの方が良い。母父サンデー系などの決め手がある馬は外伸びの方が良い。
前後も問わない。代表産駒は決め手がある馬が多いため差し有利のバイアスの方が良いが、スタートが上手い馬は前有利の馬場の方が良い。
個人的には、サクラバクシンオーやダイワメジャーよりは長く、だからといって中距離がベストとは思えない。
スプリントが得意なサクラバクシンオーと、マイルが得意なディープインパクトが亡くなってしまったので、今後はスプリント~マイル戦線で大活躍するだろう。
サンデーサイレンス系種牡馬との決め手比べではキレ負けするかもしれないが、ペースが流れて消耗戦になれば好勝負できそうだ。