2021年度にデビューした新種牡馬はおおむね例年通りの約30頭ほどいる。2019年度はキズナやエピファネイア、2020年度はドゥラメンテやモーリスなどといった実力と人気がある新種牡馬がデビューしたが、2021年度の新種牡馬はそれと比べると少し小粒といった印象だ。しかし、ドレフォンやシルバーステートなどが予想以上に目立っており、今後の活躍が期待される。
全部で2021年度新種牡馬リーディングの上位10頭を紹介する予定だが、今回は第一弾として1~5位のデータを紹介する。
【目次】
1位・ドレフォン
Raise a Native 4+5
データで見るドレフォン産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
データはすべて出走数、連対数、連対率で表している。勝利数や勝率だとデータが少なすぎるので、サンプルが多い出走数、連対数、連対率を出すことにした。
距離適性は、短距離から中距離まで幅広く勝ち鞍を挙げており万能性が伺える。今のところの代表産駒であるジオグリフは芝1800mの札幌2歳ステークス(GⅢ)を後方から捲って優勝するなど中長距離適性を感じさせたし、ヒストリックノヴァはダート1200mのエーデルワイス賞(GⅢ)で2着に入るなどスピードがある。産駒を詳しく見るとどうやら距離適性は母の血統や現役時代の成績から来るようなので、そこから推測したい。
ただ、ドレフォンは現役時代に短距離ダートのGⅠを3勝し、しかも父系がストームキャット系ということもあるので、今後は短からマイル向きが多くなってくると思われる。
馬場適正は、どちらかというとダート向きが多い。芝で走る産駒のほとんどは社台系生産馬で、母系にサンデーサイレンスの血を内包しており、馬体重も軽めが多い。一方ダートで走る産駒は、母系にサンデー系を内包していても非社台系だったり、馬体重が重めのタイプが多い。基本はドレフォンの現役時代と同じくダート向きが多いが、生産牧場や血統次第では芝でも走るタイプが出てくる。
牡牝の違いは、やはり牡馬優勢となっている。ドレフォンの父系であるストームキャット系は筋肉質でパワータイプが多く、それが産駒に遺伝しやすい。そのためか馬体重が460㎏以下の牝馬は勝ち上がるのにかなり苦労している。
月別出走数はあまり特徴が見られない。6月の新馬戦でいきなり3頭が勝ち上がるなどロケットスタートがあったが、その勢いは年末まで維持された。2勝目を挙げるのに苦労している産駒が多いのが気になるが、2021年末時点では早熟性も晩成傾向も感じる。
全体的な印象は、クロフネに近いイメージだ。基本はダートが中心だが芝でも通用し、スピードも感じられる。2021年末時点ではキレキレの決め手を使うタイプは少ないが、米国血統らしいスピードとパワーはクロフネと重なる。タメが利くのか、キレキレの決め手が使えるのか、緩急に対応できるかが出世する鍵になるだろう。
2位・シルバーステート
Hail to Reason 4 x 4 Northern Dancer 5 x 5
データで見るシルバーステート産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性は短距離型と中距離型に別れる。今のところの代表産駒で芝1400mのファンタジーステークス(GⅢ)を優勝したウォーターナビレラは1600m以下が中心、芝2000mの野路菊ステークス(OP)を優勝したロンは2戦とも2000mを使っていた。全体的に見ると非常に操作性が高くスピードもあるため、1400m以下の勝ち鞍が多くなっている印象だ。ただ、シルバーステートは中長距離が得意な血統を多く内包しているため、折り合いさえつけばもっと中長距離が増えてきそうな印象がある。
馬場適正は今のところ芝が中心だ。2021年末時点で全17勝中、芝は16勝、ダートは1勝のみとなっている。シルバーステートの現役時代は芝のみで走っていたし、産駒も芝を想定した配合が多くなっている印象なのでこの結果になったのだろう。ただ、ダートがダメな訳ではなさそうだ。地方競馬では複数の勝利を挙げる産駒も出てきているため、中央でも今後はダートに転向して活躍するタイプも出てきそうだ。
牡牝の違いはあまり差がない。代表産駒のウォーターナビレラやロンは共に牝馬だが、初年度産駒なので誤差の範囲内だろう。ただ、勝ち上がった産駒は馬格があるタイプが多くなっているため、今後は牡馬の活躍が増えてきそうだ。
月別出走数はあまり特徴が見られない。6、7月は芝短距離を中心に4勝を挙げ好スタートを切ったが、その後も成績はあまり落ちていない。すでに2勝以上を挙げる産駒も出てきており、2021年末時点では早熟性も晩成傾向も感じる。
全体的な印象は、操縦性が高くスピードがあるタイプが多いイメージだ。2勝以上挙げている産駒はすべて逃げ先行して勝利した。まだキレキレの決め手を使って勝利した産駒はおらず、シルバーステートの現役時代のような勝ち方が多くなりそうだ。
あとは距離がどれくらい持つかだ。2021年末時点では1400m以下の短距離の勝ち鞍が多いが、血統的にはむしろ中長距離の方が得意そうだ。折り合いに苦労することが少ないとの話もよく聞くので、クラシックを走る産駒も出てくるだろう。
芝の直線が長いコースは苦手な傾向が出ている。東京、阪神外回り、新潟外回りではまだ1勝しかしておらず、そのコースの勝率はたった2.1%だ。先行力はあるが決め手が無いタイプが多いことがこの結果になったのだと思われ、今後は直線が長いコースでの割引が必要かもしれない。
3位・イスラボニータ
In Reality 4 x 5
データで見るイスラボニータ産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性は、やはりフジキセキ系種牡馬らしく短距離~マイルが中心だ。牡馬はマイルを中心に短距離や中距離でも走るが、牝馬は2021年末時点では勝ち鞍のすべてが1200mとなっている。イスラボニータの現役時代は皐月賞を優勝しダービーでも2着に入っているので中距離を走る産駒も出てくるだろうが、基本はフジキセキ系種牡馬らしく短距離~マイルが中心になるだろう。
馬場適正は今のところ芝が中心。イスラボニータの現役時代もそうであったように、芝向きの産駒が多くなっている。ただ、どちらかというとダートの勝率の方が高くなっており、今後はダートを主戦場にする産駒も増えてきそうだ。他のフジキセキ系種牡馬のように芝ダート兼用になってくるだろう。
牡牝の違いはおおむね標準位で特徴は出ていない。
月別出走数は今のところ晩成傾向が見られる。フジキセキ系種牡馬は仕上がりが早く2歳前半から勝ち上がるタイプが多く出てくるのが特徴だが、イスラボニータ産駒はそれが無い。どうやら気性が幼く一癖も二癖もある産駒が多いようで、それがこの結果になったのだと思われる。そういえばフジキセキの初年度産駒もクセがあるタイプが多く育成に苦労したようなので、イスラボニータ産駒も傾向がつかめてくると本来の早熟性が発揮されてきそうだ。
血統は、クロフネやフレンチデピュティ、サクラバクシンオーといった早熟スピード血統との相性が良いようだ。今のところはスタミナを強化するよりも、スピードを強化する配合の方が成功する傾向となっている。
全体的な印象は父のフジキセキと似た産駒が多いイメージだ。フジキセキ産駒は、距離は短距離からマイル前後が得意で、スタートが上手く内枠が得意な器用なタイプが多い。まだフジキセキ産駒の特徴である早熟性や芝ダート兼用といったものが出てきていないが、気性の問題がクリアされるとフジキセキの傾向に似てきそうだ。イスラボニータの現役時代のようなクラシック向きではなく、代表産駒は短距離やマイル向きの方が多くなるかもしれない。
4位・キタサンブラック
Lyphard 4 x 4 Northern Dancer 5 x 5+5
データで見るキタサンブラック産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性は中距離が中心。今のところ1400m以下の勝ち鞍は無しとなっており、これほど中長距離適性が感じられる種牡馬は珍しい。特に牡馬は1600m以下の勝ち鞍は無しと徹底しており、これほど短距離が走らない種牡馬は見たことが無い。異例なタイプで、キタサンブラックの現役時代のようなステイヤー種牡馬である確率が非常に高い。
馬場適正は今のところ芝が中心だ。やはりキタサンブラックの現役時代のように芝から走らせる産駒が多いようで、2021年末時点の全13勝中、芝が11勝となっている。ただ、ダートの勝率は11.1%なのでダートがまったく走らないということはない。馬格と先行力がある産駒が多いようなので、ダート向きの産駒も一定以上は出てくるはずだ。
牡牝の違いは、牡馬優勢の傾向となっている。一般的にパワーやスタミナがある種牡馬は牡馬優勢になりやすく、キタサンブラック産駒はその傾向通りである。代表産駒は牡馬が多くなりそうだ。
月別出走数は晩成傾向が見られる。6月は2頭しかデビューできず、夏ごろから多く出走し始める傾向だった。2022年1月以降に長距離のレースが増えてくるので、勝ち鞍もどんどん増えてくるだろう。
全体的な印象は、ステイゴールドやハーツクライのようなスタミナタイプの種牡馬になりそうだ。基本的にはスタートが上手く器用なタイプが多いので、どちらかというとステイゴールドに近いかもしれない。ただ、代表産駒のイクイノックスは芝1800の東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)で上がり3ハロン32.9秒の抜群の切れ味を使い優勝したので、このような産駒が増えてくるとクラシックを非常に賑わせてくれるだろう。
5位・アメリカンペイトリオット
Seattle Slew 5+5
データで見るアメリカンペイトリオット産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性はマイル前後が中心。まだ1200mの勝ち鞍は無いが、1400~1800mで勝ち鞍を挙げており、アメリカンペイトリオットの現役時代のようにマイル前後を得意としている。そのためこの傾向からすると、1200m以下や2000mで勝ち鞍が無いのは偶々だろう。
馬場適正は芝が多くなっている。血統的にはダート向きの血が多く内包されているが、アメリカンペイトリオットは現役時代に芝のレースにしか出走しておらず、それが遺伝されている印象だ。ただ、地方競馬のファーストシーズンサイアーでは2位につけたようにダートが苦手な訳ではない。むしろ血統的には得意になる可能性があり、2022年1月以降はダートのレースが増えてくるので、芝→ダート替わりの激走に注意したい。
牡牝の違いは、今のところ牡馬優勢となっている。出走数ではダブルスコアで牝馬の方が多いが、勝利数や連対数はあまり変わらない。一般的に牝馬の方が仕上がりが早いため、アメリカンペイトリオット産駒も牝馬の出走数が多くなったのだろう。
月別出走数は少し晩成傾向が見られる。6月1週目にいきなり新馬で勝利を挙げたが、その後が続かなかった。産駒の勝ち上がり方を見ると叩いて上昇するタイプが多いので、使いながら良くなるタイプなのかもしれない。
全体的な印象としては、先行力を少しプラスしたダイワメジャーに近いイメージがある。2021年末時点で全8勝中、逃げ5勝、先行2勝となっており、逃げ先行押し切りで勝つのがパターンだ。前走までは先行できず馬群にのまれ下位に終わった馬が、立て直して逃げ切り勝ちする産駒が複数あった。キレる決め手を使えるタイプがほとんどいないため、いかに逃げ先行できるかがポイントになる。
上位人気で勝ち切れず、人気を落として9~12番人気で激走というパターンがかなりある。そのためか2021年末時点の複勝回収率が124%となっており、穴をあける場面が多い。