トラックバイアス&血統研究

トラックバイアス(馬場のクセ)と血統を研究

【キタサンブラック】種牡馬の特徴 牡馬は中長距離、牝馬はマイル前後が得意!?(2024,2,9更新)

 

芝の中長距離を主戦場に春秋の天皇賞やジャパンカップなどGⅠを7勝し、獲得賞金が歴代2位となったキタサンブラック。2020年には顕彰馬に選出され、馬主が有名な歌手であることもあり現役時代は屈指の人気があった。種牡馬入り後は初年度産駒のイクイノックスが活躍するなど、次世代のリーディングサイヤーへの期待も高い。

ここでは、キタサンブラック産駒の特徴を紹介する。

 

 

【目次】

 

 

 

 

 

血統

Lyphard 4 x 4  Northern Dancer 5 x 5+5

 

父はディープインパクトの全兄にしてスプリングステークス(GⅡ)を優勝したブラックタイド。

母は屈腱炎の影響で不出走のシュガーハート。

母父は"最強スプリンター"の呼び声が高いサクラバクシンオー。産駒にはグランプリボスやビッグアーサーなど数多くいる。

 

近親やきょうだいには目立った活躍馬はいないが、2代母・オトメゴコロは主に短距離を中心に芝ダートで中央4勝。キタサンブラックの半兄・ショウナンバッハは中日新聞杯(GⅢ)2着、全弟・エブリワンブラックはダイオライト記念(GⅡ)2着など、今後の活躍が期待できそうな牝系となっている。

サクラバクシンオーは遺伝力が非常に強く、父としても母父としても短距離馬を多く輩出した。しかしキタサンブラックはサクラバクシンオーの影響がほぼ無いようで、シュガーハートの牝系の特徴であるパワーやスタミナが遺伝されたようだ。

 

 

現役時代

デビューは2015年1月31日、東京芝1800mであった。スタートはゆったりと出て道中は後方を追走すると、直線では上がり3ハロン2位の末脚を繰り出し快勝。なお、これ以降のレースではスタートが遅れたのは1レースしかない。

3歳2戦目の500万条件(現1勝クラス)で勝利すると、スプリングステークス(GⅡ)へ重賞初出走。9番人気の低評価であったが、スタートは良く道中は2番手を追走。直線入り口では先頭に立つとそのまま突き放し、追い込んできた1番人気のリアルスティールにクビ差つけ重賞初優勝となった。

この結果、皐月賞(GⅠ)へ出走。今回もスタート良く道中は2番手を追走。直線へ向くと一時先頭に立つ勢いを見せるなど内からジリジリと伸びたが、ドゥラメンテの3着に敗れた。その後、日本ダービー(GⅠ)へ出走したが、直線で失速し14着となり夏は休養に入る。

3歳の秋はセントライト記念(GⅡ)から始動し見事優勝。

クラシック最終戦・菊花賞(GⅠ)は上手く先行し道中はインの5番手付近を追走。しかし出入りの激しい展開となり、直線へ向く頃には中団のインで身動きが取りづらい位置に。ところが、狭い隙間を縫って残り100m地点で先頭に立つと、追いすがるリアルスティールをクビ差しのぎ優勝、GⅠ初制覇となった。

その後、有馬記念(GⅠ)に出走したが、ゴールドアクターの3着に敗れ3歳シーズンを終える。

4歳は大阪杯(GⅡ)から始動したものの2着。そして4歳2戦目は天皇賞春(GⅠ)へ出走。スタート良く逃げると、道中は淡々とペースを刻み先頭をキープして直線へ。直線では残り100m付近で一時カレンミロティックに先頭を譲るものの二枚腰を発揮して抜き返し、僅か4㎝のハナ差で優勝、GⅠ2勝目となった。

4歳3戦目の宝塚記念(GⅠ)は馬場状態が稍重の中、1000m通過59.1秒のハイペースで逃げたものの、マリアライトの3着に敗れた。

4歳4戦目は京都記念(GⅡ)に出走し優勝。

4歳5戦目はジャパンカップ(GⅠ)に出走。良馬場だが小雨が降るタフな馬場の中、スタート良く逃げると淡々とペースを刻み直線へ。直線ではジリジリと後続を突き放し、2着のサウンズオブアースに2馬身2分の1差をつけ優勝、GⅠ3勝目となった。

しかし4歳6戦目の有馬記念はゴール直前にサトノダイヤモンドに交わされ2着となり、4歳シーズンを終えた。

5歳初戦はこの年からGⅠへ昇格した大阪杯(GⅠ)に出走。他にも逃げ馬がいたことから道中は3番手を追走。直線では残り300m付近で先頭に立つと二枚腰を発揮し、2着のステファノスに4分の3馬身差をつけ優勝、GⅠ4勝目となった。

5歳2戦目は2年連続で天皇賞春に出走。道中はヤマカツライデンが大逃げする中、集団の先頭となる2番手を追走。直線入り口では早々に先頭に立つと、その後は後続を突き放し2着のシュヴァルグランに1馬身4分の1差をつけレコードタイムで優勝、GⅠ5勝目となった。

5歳3戦目は2年連続で宝塚記念に出走。道中は2番手を追走するものの、直線では失速し9着に大敗。敗因は鞍上の武豊も「正直ちょっと分からない」とのコメントを残している。

休養を挟み5歳4戦目は天皇賞秋(GⅠ)に出走。この日は台風接近のため朝から雨が降り続き、芝コース上にも水が浮くほどの不良馬場。スタートはゲートが開く直前に突進しタイミングを逸してしまい、道中は後方10番手付近を追走。しかし3~4コーナーはわざと荒れたインを通りポジションを上げると、直線入り口では先頭に。直線ではタフな馬場の中で二枚腰を発揮すると、2着のサトノクラウンにクビ差つけ優勝、GⅠ6勝目となった。なお、勝ちタイムの2分8秒3は例年よりも約10秒ほど遅い。

5歳5戦目は2年連続でジャパンカップに出走。スタート良く逃げると道中は淡々とペースを刻み直線へ。直線では残り100m付近まで先頭をキープしたが、最後はシュヴァルグラン、レイデオロに交わされ3着に敗れた。ただ、レース後に左前脚を落鉄していたことが判明している。

5歳6戦目、そして現役最終戦は2年連続で有馬記念に出走。この日もスタート良くいつも通り道中は淡々と逃げる形。2週目3~4コーナーでは後続をひきつけ、直線は後続を突き放す。最後は追いすがるクイーンズリングに1馬身2分の1差をつけ優勝、GⅠ7勝目を挙げこのレースをもって引退した。

引退後は社台スタリオンステーションにて種牡馬入り。

重賞を優勝した距離は1800m~3200m。GⅠは2000m~3200m。ほとんどのレースで逃げ先行し、直線では二枚腰を発揮し押し切るのが勝利パターン。重賞で優勝した時の最大着差は2016年のジャパンカップで2馬身2分の1差だったが、ほとんどが安定したレース展開に持ち込み、着差以上の強い内容で勝利していた。

 

 

主な勝ち鞍

  • 菊花賞(GⅠ/2015)
  • 天皇賞春(GⅠ/2016・2017)
  • ジャパンカップ(GⅠ/2016)
  • 大阪杯(GⅠ/2017)
  • 天皇賞秋(GⅠ/2017)
  • 有馬記念(GⅠ/2017)

他重賞3勝

 

 

代表産駒

  • 2019年産駒

・イクイノックス(ジャパンカップ・GⅠ/2023、他GⅠ5勝、重賞1勝)

・ガイアフォース(セントライト記念・GⅡ/2022、2023年12月末現在)

・ウィルソンテソーロ(かきつばた記念・GⅢ/2023、他重賞2勝、2023年12月末現在)

 

  • 2020年産駒

・ラヴェル(アルテミスステークス・GⅢ/2022、2023年12月末現在)

・ソールオリエンス(皐月賞・GⅠ/2023、他重賞1勝、2023年12月末現在)

・スキルヴィング(青葉賞・GⅡ/2023)

 

 

 

 

 

キタサンブラック産駒の特徴

距離適正

若駒戦、芝

2021,6,1~2023,12,31

 

古馬、芝

2022,6,1~2023,12,31

短距離から長距離まで走るが、基本的には牡馬は中長距離、牝馬はマイル前後が中心

牡馬は代表産駒のイクイノックスやガイアフォースのように中長距離を主戦場にする産駒が多い。キタサンブラックの母父がサクラバクシンオーなので産駒にスタミナが遺伝されるかが心配されていたが、自身の現役時代のように産駒には豊富なスタミナが遺伝されている。しかもスタミナだけではなく、ガイアフォースは小倉芝2000mで1分56秒8のレコードタイムを持っているなど、中長距離でのスピードもある。

牝馬は代表産駒のラヴェルのようにマイル前後を主戦場にする産駒が多い。勝ち鞍の最短距離は1200m、最長距離は2200mだが、1200mと2000mは2,3着を量産しており、マイルの高い適性が感じられる。

牡馬牝馬ともに決め手がある産駒が多い。代表産駒のイクイノックスは天皇賞秋で上がり3ハロン32.7秒を記録しているし、スキルヴィングは未勝利戦で他馬と抜けた上がり3ハロン33.2秒を記録し圧勝した。ディープインパクト産駒ほどではないが、他の種牡馬の産駒と比べるとキレキレの決め手を使えるタイプが多い。

 

ダート

2021,6,1~2023,12,31

 

ダートはまだ勝利数が少ないため、若駒と古馬のデータを合わせた。

ダートは1800mが勝利数が多い。ただ、どの距離でも勝率はあまり変わらないため、まだ距離適性は判断できない。

基本的には繁殖牝馬、またはその牝系の距離適性が産駒に遺伝されている傾向だ。

 

 

馬場適正

若駒戦、芝とダートの割合

2021,6,1~2023,12,31

 

古馬、芝とダートの割合

2022,6,1~2023,12,31

出走数や勝利数は芝の方が多いが、勝率はそこまで変わらない。

芝血統でキタサンブラック自身も現役時代は芝のレースで活躍したこともあり、産駒もデビューは芝で使われることが多く、勝利数も芝が多くなっている。

しかしダートが走らない訳ではなく、芝で5着前後に敗れるか逃げ先行しても決め手が無く敗れた産駒がダートに転向し、勝ち上がる産駒が多い。ウィルソンテソーロが交流重賞を優勝しており、ダート適性も高そうだ。

今後はもっとダートの勝利数が増え、芝ダート兼用になっていきそうだ。

 

 

コース適正

若駒戦、芝

2021,6,1~2023,12,31

 

古馬、芝

2022,6,1~2023,12,31

得意な競馬場は東京、中山、中京、小倉の4場。苦手なのは福島と新潟となっている。このデータに共通点がまったく無く、どうしてこの結果になったのかは分からない。ただ、中山芝2000mと小倉芝2000mが苦手なコースなので、スタートがゆっくりで、向こう正面が下り坂でかなり長く脚を使うコースは苦手なのかもしれない。

 

ダート

2021,6,1~2023,12,31

 

ダートは東京と中京が得意で、小倉も出走数が少ないながら勝率が高め。まだデータは少ないながら左回りの競馬場が得意な傾向だ。

 

 

牡牝の勝利数の違い

若駒戦

2021,6,1~2023,12,31

 

古馬

2022,6,1~2023,12,31

若駒戦は牡馬も牝馬の勝利数はあまり変わらないが、古馬になると牡馬の勝利数が増えてくる。これは、古馬牝馬のダートの勝利が少ないためだと思われるので、基本的には牡馬と牝馬の差はあまり無い。

 

 

 

 

 

クラス別勝利数

2021,6,1~2023,12,31

 

ダート

2021,6,1~2023,12,31

まだデータが少ないが、芝は上級条件でも勝率が落ちない傾向だ。ペースが上がっても対応できる産駒が多いかもしれない。

ダートは交流重賞を優勝した馬が出てきており、今後の出世が期待できる。

 

 

母父の血統

2021,6,1~2023,12,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ミスプロ系=ミスタープロスペクター系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

まだデータが少ないということもあるが、相性の良し悪しが少ない種牡馬である。ただ、大まかにだがスピードがある血統との相性が良く、スタミナがある血統とは悪い傾向となっている。

代表産駒のイクイノックスは母父キングヘイローだし、ラヴェルは母父ダイワメジャー、ガイアフォースは母父クロフネなど、他にも上級条件で活躍している産駒は母父がスピードタイプの血統が多い。ただ、母父フォーティナイナー系との相性は悪い。

 

ダート

2021,6,1~2023,12,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ミスプロ系=ミスタープロスペクター系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

ダートもデータが少ないが、ナスルーラ系との相性が良い。特にシアトルスルー系は勝率が23.5%となっており、かなり相性が良い傾向だ。

クロフネ、フレンチデピュティ親子との相性が悪く、特にフレンチデピュティはのべ13頭が出走し勝ち馬はいない。

 

 

成長度

2021,6,1~2023,12,31

仕上がりは早く、2歳新馬戦の勝率は14.9%となっている。特に新馬戦で強い内容で快勝した馬は、イクイノックスやラヴェルのように重賞で活躍する確率が高い。

ただ成長力もあり、今のとことは古馬になって勝てなくなることは無い。

 

 

キタサンブラック産駒の特徴まとめ

  • 距離適性は、牡馬は中長距離、牝馬はマイル前後が中心
  • 馬場適正は、芝の勝利数が多いが勝率は芝ダートではあまり変わらない
  • コース適正は、ダートは左回りが得意

 

 

個人的に考えるキタサンブラック産駒の特徴

キタサンブラック産駒が得意な芝のバイアスは、

  • 馬場    軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
  • 上がり   速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
  • 枠     超内、内、フラット、外、超外
  • 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
  • 前後    超前、前、展開次第、差し、超差し

と想定している。

馬場は軽くても重くても対応できるが、どちらかというと重い方が良い。代表産駒のイクイノックスは軽い馬場でGⅠを優勝しているが、どちらかというと重い馬場を得意とする産駒が多い。これはキタサンブラックの特徴が遺伝しているのだろう。

上がりも速くても遅くても対応できるが、どちらかというと遅い方が良い。これも上記と同じ理由だ。ただ、イクイノックスのように一部の産駒はキレキレの決め手を使えるので、各馬ごとに適性を見極めたい。

枠はどちらかというと内枠の方が良い。馬格が大きめの産駒が目立つが、意外と内枠から起用に立ち回れる産駒が多い。

直線の伸びは各馬ごとに適性を見極めたい。どちらかというと逃げ先行して押し切る産駒は内伸びの方が良いが、イクイノックスのようにキレキレの決め手を使える産駒は外伸びの方が良い。

前後も各馬毎に適性を見極めたい。これも上記と同じ理由だ。

全体的には牡馬はキズナ、牝馬はディープインパクトに似ている印象がある。牡馬はイクイノックスのように一部の産駒はキレキレの決め手を使えるが、基本的にはスタミナやパワーがあり、ダートを得意とするタイプもいる。牝馬はマイル前後の素軽いスピードがあり、決め手を使える産駒も多い。大物の産駒も多く出てきており、次世代のリーディングサイヤーを狙えるポテンシャルがある種牡馬である。

 

 

 

 

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