現役時代はジャパンカップ(GⅠ)などGⅠを2勝したスワーヴリチャード。引退後は種牡馬入りすると初年度産駒からレガレイラ、アーバンシックの2頭のGⅠ馬を輩出するなど次世代のトップサイヤーとして期待されている。
ここでは、スワーヴリチャード産駒の特徴を紹介する。
【目次】
血統
クロス無し
父は有馬記念であのディープインパクトを破るなどGⅠ2勝を挙げたハーツクライ。産駒にはジャスタウェイやドウデュースなど数多くのGⅠ馬を輩出している。
母は中央で2戦して未勝利。
母父はBCジュベナイルなど米ダートGⅠ2勝のUnbridled's Song。母父としてはコントレイルやジャックドールなど数多くのGⅠ馬を輩出している。
近親には目立った活躍馬はいないが、2代母は米国短距離ダート重賞を2勝している。
現役時代
デビューは2016年9月11日、阪神芝2000m。1番人気に支持されたが、直線での進路取りの拙さがありハナ差2着に敗れる。しかし、中3週の同じ舞台の未勝利戦では単勝1.1倍の圧倒的人気に応え優勝した。
3戦目は重賞初挑戦となる東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅢ)に出走し、上がり3ハロン1位の末脚を繰り出すもクビ差2着に敗れ、2歳シーズンはこれで終了した。
3歳初戦は共同通信杯(GⅢ)に出走。スタートは出遅れ気味だったもののすぐに中団に取りつく。直線では楽な手ごたえで馬群を抜け出し、2着に2馬身1/2差をつけ優勝、重賞初制覇となった。
3歳2戦目は皐月賞(GⅠ)に2番人気で出走。道中は少し引っ掛かりながらも中団やや後方を追走。直線では進路を外に取り追い込んだものの、アルアインの6着に敗れた。
3歳3戦目は日本ダービー(GⅠ)に出走。スタートは若干出遅れ気味だったもののすぐに取りつき先団へ。直線では進路をなかほどに取り先行していたレイデオロに追いすがるものの、あと一歩及ばず3/4馬身差で2着に敗れた。
夏は休養に充て秋はアルゼンチン共和国杯(GⅡ)で復帰し優勝。しかし有馬記念(GⅠ)はキタサンブラックの4着に敗れ3歳シーズンを終える。
4歳は金鯱賞(GⅡ)から始動し優勝。4歳2戦目は大阪杯(GⅠ)に1番人気で出走。スタートが悪く道中は後方2番手を追走したが、スローペースを嫌い向こう正面で一気に2番手へ。直線では追いこんできたペルシアンナイトを3/4馬身差しのぎ優勝、初GⅠ制覇となった。
その後は安田記念(GⅠ)、ドバイシーマクラシック(GⅠ)、宝塚記念(GⅠ)などに出走するもののそれぞれ3着に敗れ勝てないレースが続く。
しかし2019年のジャパンカップ(GⅠ)は道中中団の内を追走。馬場状態が重でタフなコンディションだったが直線は進路を最内に取り馬群を抜け出すと、2着のカレンブーケドールに3/4馬身差をつけ優勝、GⅠ2勝目を挙げた。
続いて有馬記念に出走したが残り800m付近で失速、12着に大敗した。その後、右飛節に腫れが発覚し引退、社台スタリオンステーションにで種牡馬入りが決まった。
出走した距離は1600m~2500m。重賞を優勝した距離は1800m~2400m。稍重の金鯱賞、重のジャパンカップを優勝するなど道悪では連対率100%を記録。しかし、良馬場の時計勝負やスローペースからの決め手比べでは敗れている。
主な勝ち鞍
- 大阪杯(GⅠ/2018)
- ジャパンカップ(GⅠ/2019)
- アルゼンチン共和国杯(GⅡ/2017)
- 金鯱賞(GⅡ/2018)
- 共同通信杯(GⅢ/2017)
代表産駒
- 2021年産駒
・コラソンビート(京王杯2歳ステークス・GⅡ/2023、2025年6月末現在)
・レガレイラ(有馬記念・GⅠ/2024、他GⅠ1勝、2025年6月末現在)
・スウィープフィート(チューリップ賞・GⅡ/2024、2025年6月末現在)
・アドマイヤベル(フローラステークス・GⅡ/2024)
・アーバンシック(菊花賞・GⅠ/2024、他重賞1勝、2025年6月末現在)
スワーヴリチャード産駒の特徴
距離適正
芝
2023,6,1~2025,5,31
まだ2世代分のデータしかないが、基本的には1600m以上の距離が欲しい。1400m以下は一部の気性が前向きな産駒が中心で、単勝回収率が20%台となっており一部の人気馬しか走らない傾向だ。
牝馬は距離不問で1000mから2500mまで勝ち鞍がある。ただ、やはり1600m以上が良いようでレガレイラのように距離延長して好成績を残す産駒が多い。
牡馬は1400m以下で1勝しかしておらずやはり最低でも1600mは欲しい。まだ2世代分のデータしかないが平均勝利距離が1800mを超えており、スピードはあるものの長距離適性も伺える。
馬場状態による成績の違いは重の成績が悪く、独自のデータでは馬場は軽ければ軽い方が成績は良い。
ダート
2023,6,1~2025,5,31
まだ2世代分のデータしか無くダートは11勝しかしていないため、まだ分からない部分が多い。
今の時点では距離よりも芝で先行してスピード負けしたタイプがダートで好成績を収めている。
馬場適正
芝とダートの割合
2023,6,1~2025,5,31
スワーブリチャードの現役時代どおり産駒は芝向きが多くなっている。代表産駒のレガレイラやアーバンシックのように芝は重賞で勝負できる産駒が多い。
一方ダートはまったく走らないわけではないが、現時点ではかなり苦手な部類だ。芝で先行してスピード負けした一部の産駒が走っているのみとなっている。
コース適正
芝
2023,6,1~2025,5,31
産駒毎に得意不得意がある印象だ。
レガレイラは小回りコースでペースが慣れる展開、アーバンシックは広いコースで長く脚を使える展開、コラソンビートはパンパンの良馬場で速い時計が求められる展開などが得意で、産駒毎に個性がある。
ただ、全体的に言えるのは広い競馬場でスムーズに走れると強いことで、これは父・ハーツクライの特徴を受け継いでいるように感じる。
苦手な競馬場は福島だ。データ集計期間内ではのべ33回出走し勝ち鞍は無し。3着以内も3回のみとなっておりかなり苦手なようだ。福島芝は馬場が傷みやすく時計も遅くなることが多いので、それが向かないのかもしれない。
ちなみに、馬場状態が重の時はのべ29回出走し1勝、3着以内も3回のみとなっており道悪は苦手なのかもしれない。
ダート
2023,6,1~2025,5,31
ダートはまだデータが少なく分析できない。
牡牝の勝利数の違い
2023,6,1~2025,5,31
まだ2世代分のデータしかないがおおむね平均的な数値だろう。牡馬の方が勝利数も勝率も高いが、重賞に限ると牝馬の活躍が目立つことからまだ誤差の範囲内だ。詳細な分析はもう少し様子を見たい。
クラス別勝利数
芝
2023,6,1~2025,5,31
ダート
2023,6,1~2025,5,31
芝は新馬・未勝利と比べると上級条件の勝率が高くなる傾向があるので、スワーヴリチャード産駒はペースが流れてスピードが要求される展開が得意そうだ。
ダートはまだデータが少なく分析できない。
母父の血統
芝
2023,6,1~2025,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ミスプロ系=ミスタープロスペクター系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系 サンデー系=サンデーサイレンス系
まだ2世代分のデータしかないので詳細な分析は難しいが、全体的にスタミナパワー血統との相性が良い。代表産駒のレガレイラとアーバンシックは母系がウインドインハーヘア、スウィープフィートは母父ディープスカイ、コラソンビートは母父オルフェーヴルとなっている。スワーヴリチャードは結構スピードがある血統構成なので、もしかすると配合牝馬からはスタミナやパワーを補強する配合が良いのかもしれない。
ダート
2023,6,1~2025,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ミスプロ系=ミスタープロスペクター系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系 サンデー系=サンデーサイレンス系
ダートはまだデータが少なく分析できない。
成長度
2023,6,1~2025,5,31
2歳6~9月の勝率が高いことから仕上がりは早いと感じるかもしれないが、これは最初の世代(2021年産)の2歳6~9月の勝率が21.1%と高いためだ。第二世代(2022年産)の2歳6~9月の勝率は8.9%となっているため実質の仕上がりは早くもなく遅くもなく平均的だ。
3歳前半の勝率が低いのは芝のレースが少ないためか、それとも晩成傾向だからだと思われる。
3歳後半の勝率が高いのは長距離のレースが多くなってくるためか、それとも晩成傾向だからだと思われる。
まだデータは少ないが、全体的には仕上がりは平均的で晩成傾向が感じられる。
スワーヴリチャード産駒の特徴まとめ
- 芝は長距離の適性がありそう
- 馬場適正はかなり芝向き
- 芝のコース適正は広いコースでスムーズに走れると強い
- 芝はスタミナパワー血統との相性が良い
- 晩成傾向っぽい
個人的に考えるスワーヴリチャード産駒の特徴
スワーヴリチャード産駒が得意な芝のバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場は軽い方が良い。まだデータが少なく馬場状態での得意不得意が出ていないが、筆者個人が集めているデータでは軽い馬場がかなり得意。コラソンビートが京王杯2歳ステークスをレコードタイムで優勝していたり、他にも軽い馬場で好成績を収めている。タフな馬場でのレースは少ないので、今後道悪でどのような成績を残すかに注意したい。
上がりは産駒個別による。レガレイラはほとんどのレースで上がり3ハロン1位を記録しているが、上がりが33秒台だと届かず、有馬記念やホープフルステークスのように35秒台だと優勝している。一方アドマイヤベルやスウィープフィートは上がり33~34秒台で優勝している。産駒毎に得意な上がりがあるようだ。
枠は外枠の方が良い。スワーヴリチャード産駒は基本的にスムーズに走ると好走する傾向なので、外枠の方がレースがしやすいのだろう。
直線の伸びは特にデータは出ていない。
前後は産駒個別による。先行して押し切るタイプもいれば、決め手を使うタイプもいる。産駒毎に得意なバイアスがあるようだ。
全体的には速い時計が得意な産駒が多く、逃げ先行押し切りが得意なタイプと決め手を使うタイプがいる。スローペースだと不発になる産駒が多いので注意したい。