長年、日本競馬界を牽引してきたディープインパクトとキングカメハメハが2019年に相次いで亡くなった。2017年度にロードカナロアやオルフェーヴル、2019年度にキズナやエピファネイアがデビューし次世代を担う種牡馬と予想されるが、2020年度もドゥラメンテやモーリスなど期待される種牡馬がデビューする。将来ここからリーディングサイヤーとなる種牡馬が出てくるだろうか?
では、2020年度新種牡馬から厳選した10頭の産駒の傾向を予想してみる。
【目次】
ドゥラメンテ
血統
Northern Dancer 5+5 x 5
父は説明不要のスーパーサイヤー・キングカメハメハ。
母はエリザベス女王杯(GⅠ)2連覇など重賞5勝のアドマイヤグルーヴ。
母父も説明不要のスーパーサイヤー・サンデーサイレンス。
2代母は天皇賞・秋(GⅠ)などGⅠ2勝、重賞7勝し牡馬顔負けの活躍をした名牝・エアグルーヴ。
3代母はオークス(GⅠ)で優勝し、日本有数の牝系である"ダイナカール一族"を築いたダイナカール。
近親の一部には
- ルーラーシップ(クイーンエリザベス2世カップ/香港GⅠなど重賞5勝)
- オレハマッテルゼ(高松宮記念/GⅠなど重賞2勝)
- フォゲッタブル(ステイヤーズステークス/GⅡなど重賞2勝)
- アイムユアーズ(フィリーズレビュー/GⅡなど重賞4勝)
- サムライハート(種牡馬)
など、他にも活躍馬が多数いる。
血統としては日本にはこれ以上の良血はいない。母系にはガーサント、ノーザンテースト、トニービン、サンデーサイレンス、そしてキングカメハメハと5代続けてリーディングサイヤーが配合されてきており、ドゥラメンテはまさに日本競馬の至宝である。
そして、3代母・ダイナカール、2代母・エアグルーヴ、母・アドマイヤグルーヴと3代続けてGⅠを優勝しており、ドゥラメンテで母仔4代GⅠ制覇という偉業を成し遂げた。
現役時代の主な勝ち鞍
- 皐月賞(GⅠ/2015)
- 日本ダービー(GⅠ/2015)
- 中山記念(GⅡ/2016)
重賞の優勝距離は1800m~2400m。デビューからすべて中~長距離で使われて連対を外したことがなく、皐月賞のときに見せた一瞬のキレ味は記憶に強く残っている人も多いだろう。
基本的には良馬場の中長距離でのスピード比べに強かった。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:○
- 距離 中~長距離
- 仕上がり 普通~晩成
父・キングカメハメハ系の種牡馬は、自身の現役時代の成績よりも牝系の特徴が出る傾向だ。
ロードカナロアは母のレディブラッサムの特徴である芝ダートで走る短距離~マイルの産駒が多く、トゥザグローリーとトゥザワールド兄弟は2代母のフェアリードール牝系の特徴であるパワーと器用さがある産駒が多い。
そのため、ドゥラメンテはダイナカール一族の特徴が出るだろう。ダイナカール一族の特徴としては、ルーラーシップ産駒のようにスタミナとパワーに優れたタイプが多い。ノーザンテーストからはパワー、トニービンからはスタミナが遺伝されているようだ。
ただ、ルーラーシップとの違いはサンデーサイレンスの血が入っていることだ。サンデーサイレンスは中距離のスピードと瞬発力が遺伝されるため、ルーラーシップと比べるともう少し素軽いタイプが多くなるだろう。
以上のことから、馬場適性はルーラーシップ産駒のように上級条件で活躍する馬が芝が多いだろうが、スタミナとパワーが遺伝されるためダートで活躍する産駒も多くなるだろう。決め手は、サンデーの血が含まれているためルーラーシップ産駒と比べると瞬発力はあるだろうが、ディープインパクトほどではないと思われる。
距離は中~長距離と見ている。ダイナカール一族の血を受け継ぎ、スタミナに優れた産駒が多くなるだろう。ただ、ドゥラメンテの現役時代は気性が前向きであったため、そこが強く出ると短距離で走る産駒も出てくるはずだ。
仕上がりは普通~晩成と見ている。ダイナカール一族はクラシックホースを数頭輩出しているが、基本的には古馬になってから強くなる傾向だ。一部の気性が前向きな産駒は早いうちに1勝目を挙げるだろうが、基本的には3歳になってからが勝負だろう。
ルーラーシップやハーツクライよりは素軽く、キズナと似たようなタイプが多くなると想定している。早い時期から仕上がる産駒はクラシック向き、そうではない晩成型は芝の中長距離で活躍するタイプが多くなりそうだ。
モーリス
血統
Northern Dancer 5+5 x 4+5 Hail to Reason 5+5
父はジャパンカップ(GⅠ)で優勝し、種牡馬としてもゴールドアクター、ジェネラーレウーノを輩出するなど近年評価が高まっているスクリーンヒーロー。
母は未勝利のメジロフランシス。
母父は凱旋門賞(仏GⅠ)を優勝したカーネギー。
2代母はアルゼンチン共和国杯(GⅡ)など重賞4勝のメジロモントレー。
近親には重賞を優勝した馬はいないが、4代母・メジロボサツの系統からはGⅠ5勝のメジロドーベルが出ているなど、メジロ牧場が誇る名牝系のひとつである。
4代母・メジロボサツからモンタヴァル、フィディオン、モガミと気性難の種牡馬を代々配合されている。ただ、ここにカーネギーを配合されていることから、メジロ牧場らしく長距離を意識した配合だとうかがえる。
現役時代の主な勝ち鞍
- 安田記念(GⅠ/2015)
- マイルチャンピオンシップ(GⅠ/2015)
- 香港マイル(香港GⅠ/2015)
- チャンピオンズマイル(香港GⅠ/2016)
- 天皇賞・秋(GⅠ/2016)
- 香港カップ(香港GⅠ/2016)
- ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ/2015)
重賞の優勝距離は1600~2000m。1400mでデビューしレコードで勝利していることからスピードはある。しかし、軽い芝の日本のGⅠレースよりも少し重い芝の香港のGⅠレースで優勝したため、本質的にはパワータイプだと思われる。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:△
- 距離 短~長距離
- 仕上がり 普通~晩成
まず大前提として、Roberto(ロベルト)系の種牡馬は当たり外れが大きい。現役時代に好成績を残した馬が種牡馬として大コケしたり、その逆で現役時代はいまいちだったが種牡馬として大活躍する場合もある。そのため、モーリスももしかしたら期待はずれの成績で終わる可能性があるので注意したい。
馬場適性は芝向きの産駒が多くなりそうだ。血統表はどこからどう見ても芝向きの血で固められているため、基本的には芝が中心だろう。ただ、モーリスの現役時代の馬体重は500kg前後で、しかも筋肉隆々の馬体であったためダートをこなす産駒も出てくるはずだ。
距離適正は短距離から長距離まで幅広く出るはずだ。モーリス牝系は気性難の血で固められているため、それが産駒に遺伝すると短距離を力任せに走るタイプも出てくるだろう。ただ、基本的には中長距離血統なので、代表産駒になるようなタイプは中長距離がメインになりそうだ。イメージとしてはワークフォースやエイシンフラッシュのような感じだろう。
仕上がりは遅めになりそうだ。気性が前向きなので2歳戦の短距離で走るタイプも出てくるだろうが、晩成型の血が多いため基本的にはモーリスの現役時代と同じく3歳になってから本格化するタイプが多くなるだろう。
父のスクリーンヒーローよりは距離が長く、芝向きの産駒が多くなると想定している。北海道シリーズの芝中長距離や、冬の芝コースで活躍するタイプが多くなりそうだ。
リオンディーズ
血統
Northern Dancer 5+5 x 4 Special 5 x 5
父は説明不要のスーパーサイヤー・キングカメハメハ。
母は日米のオークスを制した名牝・シーザリオ。
母父は天才・武豊をダービージョッキーにした名馬・スペシャルウィーク。
半兄にジャパンカップ(GⅠ)などGⅠ2勝、重賞4勝したエピファネイア。
半弟に皐月賞(GⅠ)などを優勝したサートゥルナーリア。
5代母・Piaは英オークスの優勝馬で、その子孫は欧州で活躍する馬が多数いる。2代母・キロフプリミエールは欧米で走り、アメリカの芝中距離GⅢを優勝。牝系は基本的には芝の中長距離で活躍するタイプが多いようだ。
現役時代の主な勝ち鞍
- 朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ/2015)
朝日杯FSを優勝し翌年のクラシックが期待されていたが、前向きすぎる気性が災いし勝てず。しかもその後に屈腱炎を発症し引退することとなった。
デビュー戦は2000mで勝利。弥生賞でもダービー馬・マカヒキにクビ差の2着など、気性面が従順であれば中距離でも活躍したと思われる。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:△
- 距離 短~中距離
- 仕上がり 早熟~普通
ドゥラメンテの項目でも書いたが、キングカメハメハ系の種牡馬は牝系の特徴を出しやすい。シーザリオ産駒は芝中長距離のタイプを輩出することが多い。
そのため、馬場適性は芝が中心だろう。半兄のエピファネイア産駒は芝向きの産駒が多く、しかも牝系は欧米の芝で活躍するタイプが多いため、リオンディーズ産駒も芝向きのタイプが中心になりそうだ。ただ、現役時代のリオンディーズは気性が前向きで、しかも馬体重が500kg前後であったためダートをこなす産駒が多く出てきてもおかしくない。
距離は短~中距離が中心だろう。現役時代のリオンディーズは気性が前向きで、しかも朝日杯FSを優勝したようにスピードはある。そのため前向きな気性面が遺伝すれば2歳から走る短距離馬が多く出てきてもおかしくない。ただ、牝系は芝中長距離で走るタイプが多いため、中距離タイプが中心になりそうだ。半兄のエイピファネイアと同じかもう少し短くなるかもしれない。
仕上がりは早めになりそうだ。現役時代のリオンディーズは気性が前向きなので、それが遺伝すれば2歳戦から走れるだろう。ただ、牝系は古馬になってから強くなるタイプが多いため、本格化するのは3歳になってからだと思われる。
エピファネイア産駒の傾向が参考になりそうだ。母のシーザリオは遺伝力が強いと想定されているため、シーザリオ産駒の種牡馬は同じようなタイプが多くなるだろう。気性が前向きなタイプは2歳GⅠやNHKマイルカップに、気性がおっとりしたタイプはクラシック向きになりそうだ。
アジアエクスプレス
血統
クロスなし
父は米国短距離GⅠを2勝し、現在は日本で種牡馬として活躍しているHenny Hughes(ヘニーヒューズ)。
母はアメリカで活躍したRunning Bobcats(ランニングボブキャッツ)。
母父は世界各国で走り、芝ダートの中距離重賞で活躍したRunning Stag。
牝系からはあまり活躍した馬は出ていないようだ。しかし血統表を見ると、Cozzene、Deputy Minister、Affirmedなどがあるように、米国のスピードがある種牡馬が代々配合されている。
現役時代の主な勝ち鞍
- 朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ/2013)
- レパードステークス(GⅢ/2014)
デビューはダートだったものの、初芝となる朝日杯FSで優勝。しかしその後は芝で勝ちきれずダートに矛先を変え、レパードSを優勝。ただ、レパードS後に骨折してからは勝ちきれず5歳で引退、種牡馬入りすることとなった。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:△ ダート:◎
- 距離 短距離~マイル
- 仕上がり 早熟
Storm Cat(ストームキャット)系は芝ダート兼用の産駒が目立ち、アジアエクスプレスも現役時代は芝とダートで重賞を優勝している。父のヘニーヒューズ産駒も芝の重賞で優勝する産駒を輩出しているように、アジアエクスプレス産駒も芝ダート兼用種牡馬として期待されているようだ。
しかし、父のヘニーヒューズ産駒を見ると勝ち鞍のほとんどがダートである。アジアエクスプレスの血統は少し芝の要素が多いため父よりは芝向きの産駒が出るだろうが、本質はダート向きだろう。現役時代の馬体重が最大で550kgを超えていたので、芝で走る産駒はサンデーサイレンスの血が入った軽量の牝馬が多くなるはずだ。
距離適正は短い方がいいだろう。アジアエクスプレスは1800mのレパードSで優勝しているが、筋肉隆々の馬体からは中長距離で走る馬がメインになるとは思えない。もちろん配合次第では中距離で走る産駒も出てくるだろうが、本質は父と同じく短距離が中心だろう。
仕上がりは早そうだ。晩成型の血はほとんど入っておらず、父の産駒も2歳戦から走れる早熟タイプが多い。狙いは2歳戦で、配合次第では古馬になっても活躍する馬も出てくるだろう。
基本的には父と同じタイプと思っていい。あとは父を超えられるかだが……、ヘニーヒューズの代替血統というところだろう。
ホッコータルマエ
血統
Mr. Prospector 3 x 5 Northern Dancer 5+5
父は説明不要のスーパーサイヤー・キングカメハメハ。
母は中央競馬のダート中距離で4勝しているマダムチェロキー。
母父はブリーダーズカップスプリント(米GⅠ)で優勝したCherokee Run。
近親にはあまり活躍した馬はいない。きょうだいも中央で1勝するのがやっとの状態となっている。ただ、母系に配合されている種牡馬はUnbridled、Bold Forbesなどそれなりの配合である。
現役時代の主な勝ち鞍
- かしわ記念(GⅠ/2013)
- 帝王賞(GⅠ/2013、2015)
- JBCクラシック(GⅠ/2013)
- 東京大賞典(GⅠ/2013、2014)
- 川崎記念(GⅠ/2014、2015、2016)
- チャンピオンズカップ(GⅠ/2014)
他重賞4勝
重賞の優勝距離は1600~2100m。中央のダートコースや地方でも比較的大きいコースは苦手としていたが、器用なため地方の小さいコースが大得意で、特に川崎記念は3連覇している。スピードよりもパワーや器用さに優れていた。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:× ダート:◎
- 距離 中長距離
- 仕上がり 普通~晩成
ドゥラメンテの項目でも書いたが、キングカメハメハ系の種牡馬は牝系の特徴を出しやすい。
馬場適性は断然ダート向きだろう。ホッコータルマエの兄弟は芝で試されたこともあったが、芝向きの種牡馬の産駒でもまったくと言っていいほど通用していない。近親にはディープインパクトを配合されていてもダートで活躍する産駒が多いので、ダートが相当合うのだろう。よほど配合相手のアシストがない限りダートが中心になるはずだ。
距離はある程度長い方がいいだろう。ホッコータルマエ自身はマイル~長距離が中心だったし、近親も中距離馬が多い。スピードよりもパワーや器用さが売りだったため、基本的には中長距離の小回りが中心になるだろう。
仕上がりは遅めだろう。きょうだいや近親は勝ち上がるのに苦労しているタイプが多く、初勝利は3歳になってからというケースがほとんどだ。配合相手のアシストがない限りは、2歳からガンガンと走るタイプではない。
おそらくトゥザワールドやオルフェーヴルのダート産駒と似た感じになるだろう。どちらかというと中央よりも地方の方が向くかもしれない。
マクフィ
血統
Northern Dancer 5 x 4 Never Bend 5+5
父は現役時代に欧州のGⅠを3勝し、2015年にフランスのリーディングサイヤーとなったDubawi。
母はDhelaal。不出走。
母父は世界中で短距離~マイルの活躍馬を輩出しているGreen Desert。
近親には
- Alhaarth(デューハーストステークス/英GⅠなど重賞7勝)
- Green Dancer(仏2000ギニー/仏GⅠなどGⅠ3勝)
- ケープリズバーン(TCK女王盃/GⅢ)
など、他にも欧米で数多くの活躍馬がいる。
すでにイギリスやフランスで種牡馬デビューしており、ニュージーランドにもシャトルされていた。
重賞で活躍する産駒もかなり輩出されていて、代表産駒は
- Make Believe(仏2000ギニー/仏GⅠなどGⅠ2勝)
- Sofia Rosa(オーストラリアンオークス/豪GⅠなど重賞3勝)
- Marky Mark(マナワツサイアーズプロデュースステークス/新GⅠなど重賞2勝)
など、幅広い距離の活躍馬がいる。
現役時代の主な勝ち鞍
- 英2000ギニー(英GⅠ/2010)
- ジャックルマロア賞(仏GⅠ/2010)
- ジェベル賞(仏GⅢ/2010)
すべての出走距離は1400~1600m。GⅠでの勝利はいずれも中団から後方に待機し差しきり勝ちであった。
ちなみに、英2000ギニーでは現在日本の騎手として活躍しているクリストフ・ルメールが騎乗していた。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:△
- 距離 短~中距離
- 仕上がり 早熟~普通
欧州で繋養されていた頃に輸入された産駒・アールブリュット(メートルダールの半姉)が日本で走っている。勝ち鞍は函館芝1200m、札幌芝1500m、新潟芝1800m、東京芝1800mで、いずれも中団から差しきり勝ちをしていた。
馬場適性は、同父系のモンテロッソやDubawiの特徴、マクフィの現役時代の成績からすると芝向きの産駒が多くなるだろう。パワーがありそうなのでダートもある程度こなすと思われるが、欧州の血統が多いため上級条件で走る産駒は芝が中心になりそうだ。
距離は幅広くこなしそうだ。Dubawi産駒やマクフィが欧州繋養時に残した産駒の傾向を見ると、距離適正は配合相手の特徴が出そうだ。
仕上がりは早めだろう。マクフィが欧州繋養時に残した産駒から2歳チャンピオンやクラシックホースが出ている。アールブリュットも2歳の函館でデビューしているため、仕上がりが早い産駒が多くなりそうだ。
日本の芝で活躍馬が出るためには決め手があるかが重要になる。マクフィの現役時代は中団後方から差して勝利していたように、それが産駒に遺伝されれば多くの活躍馬が出るだろう。
ただ、Dubawi系は逃げ先行押し切りタイプの産駒が多い。Dubawiの血が強く出ると同父系のモンテロッソのように詰めが甘い産駒が中心になりそうだ。
おそらく、飽和するサンデーサイレンス系の牝馬と多く配合されるはずなので、サンデーの血を上手く引き出せればキングカメハメハのような種牡馬になる可能性がある。ポテンシャルはすでに欧州やオセアニアで証明されているので、あとは日本の馬場に合うかどうかだけだ。
ラブリーデイ
血統
Northern Dancer 5+5 x 5
父は説明不要のスーパーサイヤー・キングカメハメハ。
母は芝で1勝のポップコーンジャズ。
母父は菊花賞(GⅠ)馬で、長距離が得意な産駒を多く輩出したダンスインザダーク。
きょうだいや近親に目立った活躍馬はいない。
母系の配合相手を見ると、ノーザンテースト、リアルシャダイ、トニービンがリーディングサイヤー、ダンスインザダークはリーディング最高2位。父のキングカメハメハは2010、2011年のリーディングサイヤー。5代母・ペルースポートの母父はリーディングサイヤーのガーサントと、そうそうたる面々である。きょうだいや近親に目立った活躍馬がいないのが不思議で仕方がない。
現役時代の主な勝ち鞍
- 宝塚記念(GⅠ/2015)
- 天皇賞・秋(GⅠ/2015)
- 京都記念(GⅡ/2015)
- 京都大賞典(GⅡ/2015)
- 中山金杯(GⅢ/2015)
- 鳴尾記念(GⅢ/2015)
重賞で優勝した距離は2000~2400m。4歳までは中々勝ちきれなかったが、5歳になると突如覚醒。特に鳴尾記念からはGⅠ2勝を含む重賞4連勝と活躍した。
レースが上手く、重賞での優勝はほぼすべて4角5番手以内からの抜け出しであった。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:△
- 距離 中長距離
- 仕上がり 普通~晩成
ドゥラメンテの項目でも書いたが、キングカメハメハ系の種牡馬は牝系の特徴を出しやすい。
母系の血統を見ると馬場適性は芝向きだろう。きょうだいはダートで活躍した馬も多少いるが、基本的には芝で走った馬が多い。近親も芝で走る馬が多いため、基本的には芝向きの産駒が多くなりそうだ。
距離は長い方がいいだろう。母系の血統を見ると長距離向きだし、きょうだいの勝ち鞍もほとんどが1800m以上である。気性も悪くないとのことなので、マイル以下では忙しいかもしれない。
仕上がりは遅めだろう。ラブリーデイは2歳8月にデビューし2連勝しているが、本格化したのは5歳になってからである。きょうだいも初勝利は3歳以降が多いため晩成型だろう。
おそらくステイゴールドと似た感じになるだろう。器用でスタミナがあり、芝向きという所はステイゴールドに似ているように感じる。しかし、母系のダンスインザダーク、トニービン、リアルシャダイが強く出るとエンジンのかかりが遅いジリ脚の産駒が出るかもしれない。そうなると勝ち上がるのに苦労する産駒が多くなるだろう。
ミッキーアイル
血統
Northern Dancer 5 x 4+5+5
父は日本の至宝・ディープインパクト。
母は中央ダートの1000mで2勝したスターアイル。
母父は欧州の1400~1600mのGⅠを7連勝した快速馬・Rock of Gibraltar。
近親には
- ラッキーライラック(大阪杯/GⅠなどGⅠ2勝、2020年4月末現在)
- アエロリット(NHKマイルカップ/GⅠなど重賞3勝)
- ダイヤモンドビコー(阪神牝馬ステークス/GⅡなど重賞4勝)
などがいる。
ディープインパクト産駒といえばキレキレの脚を使う産駒が多いが、ミッキーアイルは出走したレースの半分以上で逃げている。このスピードはおそらく母父のRock of Gibraltarの遺伝が強いのだろう。産駒にはディープが遺伝するのか、それともRock of Gibraltarの方が強く出るのかが注目される。
現役時代の主な勝ち鞍
- NHKマイルカップ(GⅠ/2014)
- マイルチャンピオンシップ(GⅠ/2016)
- スワンステークス(GⅡ/2014)
- シンザン記念(GⅢ/2014)
- アーリントンカップ(GⅢ/2014)
- 阪急杯(GⅢ/2016)
新馬・未勝利戦を含め出走した距離はすべて1600m以下。重賞の優勝はすべて逃げ切り勝ちと、ディープインパクト産駒としては珍しい快速馬である。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:○
- 距離 短距離~マイル
- 仕上がり 早熟~普通
ディープインパクトの後継種牡馬は数多くいるが、その中でも異例な短距離向きになりそうだ。
馬場適性はディープ系なのでやはり芝向きが多くなりそうだ。牝系も欧州で走る傾向なので、大物は芝からとなるだろう。ただ、ディープ系種牡馬は大きい産駒だとダートもこなすこともあるため、ダートがからっきしということはないはずだ。
距離は短い方がいいだろう。ミッキーアイル自身もマイルまでだったし、母父のRock of Gibraltarも短距離の活躍馬を多く輩出している。配合次第では1800m以上を走ってもおかしくないが、大物は短距離かマイルからだろう。
仕上がりは早いはずだ。ミッキーアイル自身も9月デビューと早めだったし、母父のRock of Gibraltarも仕上がりが早い産駒が多い。ミッキーアイルも気性が前向きだったため、産駒は2歳戦から活躍するだろう。
おそらくダイワメジャーと似たような感じになるだろう。ただ、ディープインパクト系なので一線級のスプリンターとのスピード比べには不安がある。スプリント路線で活躍するためには配合相手のアシストが欲しい。
阪神JFや朝日杯FS、NHKマイルカップで活躍し、古馬になるとスプリント~マイルの重賞で活躍するのが上級馬の成長パターンだろう。
ダノンレジェンド
血統
Raise a Native 5 x 5
父はエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出されたMacho Uno。
母はアメリカで1勝したMy Goodness。
母父は一大父系を形成しているStorm Cat。
きょうだいには
- ダノングッド(京葉ステークス/OP)
- ダノンキングリー(中山記念/GⅡなど重賞3勝、2020年4月末現在)
がいる。
2代母のCaressingはBCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)など重賞5勝。その産駒にトラヴァーズステークス(米GⅠ)などを優勝したWest Coastがいるように、この牝系は近年活躍馬を多く輩出している。
ダノンレジェンドは父のMacho Unoよりも、母系の遺伝の方が強いのかもしれない。
現役時代の主な勝ち鞍
- JBCスプリント(GⅠ/2016)
- 東京盃(GⅡ/2015)
- カペラステークス(GⅢ/2014)
- 黒船賞(GⅢ/2015、2016)
- 東京スプリント(GⅢ/2015)
- クラスターカップ(GⅢ/2015、2016)
- 北海道スプリントカップ(GⅢ/2016)
勝ち鞍の距離、重賞で優勝した距離はともに1400m以下のスプリンターである。上手く揉まれずに走ると強い一方、出遅れたりして揉まれると脆い。いかにも米国血統という感じで、この気性が産駒に遺伝されるかが注目される。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:△ ダート:◎
- 距離 短距離
- 仕上がり 普通~晩成
父系は世にも珍しいヒムヤー系である。コンスタントに活躍馬が出ないため血統的にはかなりマイナーだが、偶に一発屋が出ることから細々と父系が繋がっている。日本でこの系統が繋がるのかが一部の血統マニアから注目されているようだ。
馬場適性はダート向きだろう。父のMacho Unoはダート向きの産駒が多いし、ダノンレジェンドのきょうだいはダノンキングリーを除き、ディープインパクトと配合されてもダートで勝ち鞍を挙げている。よほど配合相手のアシストがない限りはダートが中心になるだろう。
距離は短距離馬が多くなりそうだ。きょうだいも短距離馬が多いことから、この母系は短距離血統なのだろう。
仕上がりは遅くなりそうだ。ダノンレジェンドは新馬こそ勝ったものの、2勝目は3歳8月の地方競馬である。きょうだいも初勝利が遅かったり、2勝目を挙げるのにも苦労している。使われながら徐々に力を付けるタイプで、出世するのは遅くなりそうだ。
きょうだいはクセがある馬が多い。ダノンレジェンドや半弟のダノングッドは揉まれると脆く、半弟のミッキーマインドはダート短距離の後方一気型である。この母系は気難しいようなので、もしかしたら産駒にも遺伝し、一発大穴をあけるかもしれない。
エイシンヒカリ
血統
Northern Dancer 5 x 4
父は日本の至宝・ディープインパクト。
母はアメリカで3勝を挙げたキャタリナ。
母父は一大父系を形成しているStorm Cat。
近親には
- Sir Beaufort(サンタアニタハンディキャップ/米GⅠなど重賞3勝)
- スマイルカナ(フェアリーステークス/GⅢ、2020年4月末現在)
- エーシンクールディ(GRANDAME-JAPAN2011、2012古馬チャンピオン)
などがいる。
ディープインパクト×Storm Catの配合はいわゆるニックスとして知られている。キズナ(日本ダービー/GⅠなど)、ラキシス(エリザベス女王杯/GⅠなど)、サトノアラジン(安田記念/GⅠなど)、リアルスティール(ドバイターフ/UAE・GⅠなど)等と、他にも数多くの活躍馬がいる。
現役時代の主な勝ち鞍
- 香港カップ(香港GⅠ/2015)
- イスパーン賞(仏GⅠ/2016)
- 毎日王冠(GⅡ/2015)
- エプソムカップ(GⅢ/2015)
出走した距離はすべて1800~2000m。アイルランドトロフィーでは外ラチまで斜行するなど気難しい馬だったようで、ほとんどのレースが逃げの戦法であった。
産駒の傾向予想
- 馬場 芝:◎ ダート:○
- 距離 短距離~中距離
- 仕上がり 早熟~普通
キズナと同じディープインパクト×Storm Catの配合だが、母系の血統構成が違うため、産駒の傾向も少し違ってきそうだ。
馬場適性はディープインパクト系種牡馬なので芝向きだろう。エイシンヒカリの現役時代はすべて芝のレースに使われていたし、中距離で良いスピードを見せていたため、上級馬は芝が中心だろう。ただ、エイシンヒカリの現役時代の馬体重は500kg前後の大型馬だったし、母父もStorm Catなのでダートは苦手ではないはずだ。
距離は長すぎると厳しいかもしれない。エイシンヒカリの現役時代は良いスピードを見せていたし、きょうだいは短距離~中距離で活躍する馬が多い。もちろん配合相手次第では長距離もこなせると思うが、エイシンヒカリは気性が前向きだったため、それが強く遺伝されると短い距離の方がいいだろう。
仕上がりは早いかもしれない。ディープインパクト×Storm Catの配合だし、エイシンヒカリの気性も前向きなので順調に馴致されれば仕上がりが遅いということはないはずだ。ただ、エイシンヒカリの現役時代は体質が弱くデビューが3歳4月だったため、それが遺伝されると産駒の仕上がりも遅くなるかもしれない。
基本的にはキズナと似たタイプが多くなりそうだ。ただ、母系の血統を見るとキズナはパワーやスタミナが優勢、エイシンヒカリはスピードと底力が優勢となっている。そのため、キズナ産駒よりも距離は短くなりそうだ。
あとはディープインパクトの決め手が遺伝されるかが注目される。キズナ産駒はパワーが優勢になりキレキレの脚を使える産駒は少ないが、エイシンヒカリはスピード優勢だと思われる。そのため、気性が大人しく道中で我慢できれば、父譲りの決め手が使える産駒が出てくるかもしれない。