現役時代はアメリカの短距離~マイル路線で活躍したヘニーヒューズ。引退後はアメリカやオーストラリアで種牡馬生活を送っていたが、日本に輸入された産駒が大活躍したことから、2014年からは優駿スタリオンステーションで繋養され大人気種牡馬となっている。
ここでは、ヘニーヒューズ産駒の特徴を紹介する。
【目次】
血統
クロスなし
父はHennessy(ヘネシー)。日本でも2001年に1年だけリース種牡馬として繋養されたほか、ヨハネスブルグやサンライズバッカスなど多くの活躍馬を輩出している。
母は米国で1勝のMeadow Flyer(メドウフライヤー)。
母父はMeadowlake(メドウレイク)。主な産駒にMeadow Star(メドウスター)がいるほか、リアルインパクトとネオリアリズム兄弟の母父でもある。
母の母はファーストフライトH(米GⅢ)を優勝したShortley(ショートレイ)。近親にはGⅠを優勝する大物の活躍馬はいない。
現役時代
デビューは2歳6月のダート5ハロン戦で、2着に6馬身差をつける快勝。
次走は7月のダート5.5ハロン戦、トレモントステークス。スタートはあまり良くなかったがすぐに立て直すと、3コーナーから後続を徐々に突き放しそのまま15馬身差の大楽勝。
すると次走はダート6ハロンのサラトガスペシャルステークス(米GⅡ)に出走。スタート良く逃げると、直線を向く頃には後続に大差をつける。直線では多少差を詰められたが3馬身4分の3差で初の重賞制覇となった。
しかしその後、ホープフルステークス(米GⅠ)、シャンペンステークス(米GⅠ)、ブリーダーズカップジュヴェナイル(米GⅠ)と3戦連続でGⅠに出走したが、すべて2着に終わり2歳シーズンを終える。
3歳はUAEダービー(GⅡ)を目標に調整されたが準備や体調が整わず、UAEダービーや米国3冠レースを回避し春は全休となった。
7月に復帰しダート6ハロンのジャージーショアーブリーダーズカップステークス(米GⅢ)へ出走。わずか4頭立てであったが、直線では持ったまま後続を突き放すと10馬身差で圧勝し、スピードの違いを見せつけた。
次走はダート7ハロンのキングスビショップステークス(米GⅠ)を選択。スタート良く先行すると3コーナーでは単独先頭へ。直線ではそのまま突き放し5馬身と4分の1差の圧勝で初のGⅠを制覇。
そして次走は10月のダート6ハロン戦・ヴォスバーグステークス(米GⅠ)へ出走。強豪が揃っていたが、スタート良く逃げる形。直線まで逃げ争いが続いたが、直線に入ると後続を徐々に突き放し2馬身4分の3差でGⅠ2勝目を挙げた。
次走はチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート6ハロンのブリーダーズカップスプリント(米GⅠ)を選択。しかし、スタートで躓くと、そのまま馬群に包まれて見せ場なく14頭立ての14着に終わる。
ブリーダーズカップスプリントでは敗れてしまったが、それまでのレースで短距離向きのスピードを見せたことから3歳一杯で引退、米国で種牡馬入りし、オーストラリアへもシャトルされた。
しかし、初年度産駒が思ったほどの成績を残せず、9歳時にオーストラリアへトレードされる。
ところが、その直後に米国に残された産駒の中からBeholder(ビホルダー)が大活躍し、再度米国へトレード。
一方、日本では持ち込み馬のヘニーハウンドとケイアイレオーネが重賞を制覇するなど大活躍していた。同系統の種牡馬・ヨハネスブルグも活躍が見られたことから、2013年10月に優駿スタリオンステーションが購入、翌2014年から日本で種牡馬入りし、2017年から初年度産駒がデビューしている。
出走距離は5ハロン(約1000m)~8.5ハロン(約1700m)。重賞で優勝した距離は6~7ハロンだが、6ハロン戦では出遅れたブリーダーズカップスプリント以外は後続を突き放して優勝するなど、短距離では世代屈指のスピードを見せている。
主な勝ち鞍
- キングスビショップステークス(米GⅠ/2006)
- ヴォスバーグステークス(米GⅠ/2006)
- サラトガスペシャルステークス(米GⅡ2005)
- ジャージーショアーブリーダーズカップステークス(米GⅢ/2006)
代表産駒
- 2008年産駒
・ヘニーハウンド(ファルコンステークス・GⅢ/2011)
・サウンドボルケーノ(中央3勝、種牡馬)
- 2010年産駒
・ケイアイレオーネ(シリウスステークス・GⅢ/2013、他重賞1勝)
・Beholder(ブリーダーズカップジュヴェナイルフィリーズ・米GⅠ/2012、他米GⅠ10勝)
- 2011年産駒
・アジアエクスプレス(朝日杯フューチュリティステークス・GⅠ/2013、他重賞1勝)
- 2012年産駒
・モーニン(フェブラリーステークス・GⅠ/2016、他韓国GⅠ1勝、重賞1勝)
- 2015年産駒
・レピアーウィット(マーチステークス・GⅢ/2021、2021年6月末現在)
- 2016年産駒
・ワイドファラオ(かしわ記念・GⅠ/2020、他重賞2勝、2021年6月末現在)
- 2018年産駒
・アランバローズ(全日本2歳優駿・GⅠ/2020、2021年6月末現在)
・ウェルドーン(関東オークス・GⅡ/2021、2021年6月末現在)
ヘニーヒューズ産駒の特徴
距離適正
芝
2010,6,1~2021,5,31
芝は出走数も勝利数も少ないので、世代限定戦と古馬のデータを1つにまとめた。
やはりヘニーヒューズ自身の現役時代と同じように短距離が中心である。勝ち鞍の約半数が1200mで、約9割が1600m以下となっている。
ヘニーヒューズ産駒は筋肉質で馬格も大きいタイプが多いため、母系のアシストがない限り長距離は厳しいのだろう。
若駒戦、ダート
2010,6,1~2021,5,31
古馬、ダート
2011,6,1~2021,5,31
勝ち鞍の約3分の2が1400m以下なので、ダートも短距離が中心である。
ただ、牡馬は1200m、1400m、1800mの出走数や勝ち鞍がほとんど同じなのに対し、牝馬はほとんどが1400m以下となっている。つまり、牡馬は配合次第では中距離も走れるが、牝馬は短距離が中心だ。
距離が長すぎると厳しいようだ。ケイアイレオーネがシリウスステークスを優勝しているが、基本的には1900m以上の距離になると出走自体が少なくなる。ヘニーヒューズの繋養時の馬体重が650kg前後になるとのことなので、長距離はスタミナが持たないのかもしれない。
馬場状態は乾くほど成績が良い。スピードよりもパワーがある種牡馬なのだろう。
馬場適正
若駒戦、芝とダートの割合
2010,6,1~2021,5,31
古馬、芝とダートの割合
2011,6,1~2021,5,31
勝ち鞍の約9割がダートとなっているため、ほぼ完全なダート血統である。
しかし、芝ではアジアエクスプレスが朝日杯フューチュリティステークスを優勝しているように、走らないこともない。ただし、芝の勝ち鞍のほとんどが3歳6月までとなっている。おそらく、古馬になると筋肉が硬くなり、芝ではスピード不足になるためこうなるのだろう。
あと、日本に輸入されてからの産駒で芝を走るタイプは、母父がサンデーサイレンス系の場合が多い。やはり芝を走るためには母系から芝向きのアシストが欲しい。
コース適正
芝
2010,6,1~2021,5,31
芝はデータが少ないので、若駒戦と古馬のデータをまとめた。
あまり得意不得意は現時点では無いようだが、強いて言えば直線に坂があるコースが苦手かな?くらいである。データが少ないので分析するのが難しい。
若駒戦、ダート
2010,6,1~2021,5,31
古馬、ダート
2011,6,1~2021,5,31
基本的には広いコースが得意で、幅員が狭かったりコーナーがキツいコースが苦手な傾向だ。
特に東京ダート1600mはモーニンやワイドファラオが重賞で優勝しているようにかなり得意で、他にも京都ダート1400mも得意な傾向だ。ヘニーヒューズ産駒は馬格があるタイプが多いため、コーナーが緩い競馬場が合う。
そういった意味では、コーナーがキツイ福島と小倉は苦手な傾向である。福島はデータ集計期間中は勝率7.4%、単勝回収率26%で、小倉は勝率7.2%、単勝回収率32%と散々な結果だ。
阪神は距離によって成績が違う。1200mは勝率が13.9%なのに対し、1400mは7.2%、1800mは9.6%となっている。同じ急坂がある右回りの中山の数字は悪くないので、なぜこうなっているのかは分からない。
牡牝の勝利数の違い
若駒戦
2010,6,1~2021,5,31
古馬
2011,6,1~2021,5,31
平均的な数字か、少し牡馬が優勢といったくらいである。
若駒戦は牡馬の数字が高い。ヘニーヒューズ産駒はダートで走る馬が多いので、馬格がある牡馬の数字が高くなるのだろう。
古馬は平均的な数字である。おそらく、牝馬は筋肉がついてきてダートでも走れるようになると思われるので、この数字になったのだろう。
芝は全25勝中、牡馬が17勝、牝馬が7勝、セン馬が1勝となっており、牡馬優勢となっている。芝の重賞を優勝したのもすべて牡馬なので、ヘニーヒューズ産駒が芝を走るためにはパワーが必要なのかもしれない。
クラス別勝利数
芝
2010,6,1~2021,5,31
ダート
2010,6,1~2021,5,31
芝もダートも、下級条件から上級条件まで勝率があまり変わらないか、上級条件の方が少し高くなっている。
これはおそらくだが、ヘニーヒューズ産駒はあまり決め手がないのでペースが速くなったほうがいいからだと思われる。一般的には上級条件の方がペースが速くなりやすいので、この数字になったのだろう。
母父の血統
芝
2010,6,1~2021,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ネイティヴD系=ネイティヴダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
芝はデータが少ないため分析が難しいが、あまりサンデーサイレンス系との相性は良くないようだ。特にディープインパクトやダンスインザダークといったような、サンデー系の中でもスタミナタイプとの相性が悪い。
逆に、アグネスタキオンやデュランダルといった短距離向きのサンデー系との相性はそこまで悪くない。変にスタミナを強化する配合よりは、スピードを生かす配合の方がいいようだ。
その他の数字が高いのは、母父Crusader Swordのヘニーハウンドの4勝が含まれているため。それを除くと、他と同じか低いくらいになる。
若駒戦、ダート
2010,6,1~2021,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ネイティヴD系=ネイティヴダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
古馬、ダート
2011,6,1~2021,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ネイティヴD系=ネイティヴダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
ダートもサンデー系との相性が悪い。基本的にサンデー系は芝向きの産駒を多く輩出するため、ダート向きのヘニーヒューズとは合わないのだろう。ただ、サンデー系は仕上がりが早いタイプも多いため、若駒戦の数字は他と同じか少し低いくらいとなっている。
ネイティヴダンサー系とは相性は良い。一般的にノーザンダンサー系とネイティヴダンサー系がニックスというのもあるし、ヘニーヒューズ自身の5代血統表内にネイティヴダンサー系の血が少ないということもあり、この結果になったのだろう。
あとは、欧州血統との相性もあまり良くない。おそらく、ヘニーヒューズは短所を補う配合よりも、長所を伸ばす配合の方が良いのだろう。今後も米国短距離型のネイティヴダンサー系との配合馬に注目したい。
成長度
2010,6,1~2021,5,31
このデータでは日本で繋養されてから43世代分と外国産馬として輸入された分しかないが、早熟傾向が見られる。
一般的にだが、2歳の勝率が高くそれ以降が右肩下がりになる場合は早熟傾向、2歳よりも3,4歳の勝率が高いと普通か晩成傾向となる。ヘニーヒューズは前者なので早熟だと思われる。
ただ、2017年生まれの世代は3歳になってもあまり勝率が下がらない傾向なので、今後はどうなるか分からない。
血統表を見ると流行血統がほとんど無く、異系血統が多い。こういった血統はしぶとく成長する場合もあるので、今後は古馬の活躍にも注意したい。
ヘニーヒューズ産駒の特徴まとめ
- 牝馬は短距離中心、牡馬は中距離まで
- ほぼ完全なダート血統
- 芝で走るタイプはほぼ3歳6月まで
- 東京競馬場や京都競馬場など広いコースが得意
- ダートは少し牡馬優勢、芝は牡馬優勢
- 上級条件の方が勝率が高い
- サンデーサイレンス系との相性が悪く、ネイティヴダンサー系との相性が良い
- 少し早熟傾向
個人的に考えるヘニーヒューズ産駒の特徴
ヘニーヒューズ産駒のダートの得意なバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場は重い方が良い。パワー型の大きい産駒が多く、勝率も馬場が乾くほど高くなっている。穴をあけるのも良馬場が多く、基本的にはパワーで押し切るタイプだ。ただ、母父がスピード血統の場合は、代表産駒のモーニンのようにスピードがあるタイプも出てくる。
上がりも遅い方が良い。スタートが上手くキレる脚を使えないタイプが多いので、上がり勝負になると厳しい。
枠は外の方が良い。米国血統らしく、代表産駒のモーニンのように揉まれると凡走するタイプが多い。スムーズに走れる外枠の方が実力を発揮しやすい。
直線の伸びはあまり気にしないが、どちらかというと内伸びの方が良い。あまり速い上がりを使えないので、差し馬が台頭しにくい内伸びの方が能力を発揮しやすい。
前後は前有利の方が良い。速い上がりを使えない産駒が多いので、先行押し切りができる前有利のバイアスの方が良い。
揉まれると厳しく、先行押し切りタイプが多いため、サウスヴィグラスに似ている印象だ。ヘニーヒューズ産駒はもう少し長い距離も走れるが、血統や馬格を見るともう少し短い距離の方が成績を伸びてきそうな感じがある。
サウスヴィグラスが2018年に亡くなってしまい、ダート短距離向きの産駒を輩出する種牡馬が少なくなっている。今後は、2020年に産駒がデビューしたダノンレジェンドと共に、ダート短距離で覇を競うようになるだろう。