宝塚記念(GⅠ)や有馬記念(GⅠ)などGⅠレースを6勝したゴールドシップ。しかし、2015年の宝塚記念では世紀の大出遅れや、同じく2015年の天皇賞・春(GⅠ)ではゲート入りを待たせるなど、自由奔放っぷりが印象に残る人も多いはずだ。種牡馬入り後は日高地方を中心に多くの配合牝馬を集め、ゴールドシップの現役時代に似たような産駒を多く輩出し、種牡馬としても活躍が期待されている。
ここでは、ゴールドシップ産駒の特徴を紹介する。
【目次】
血統
Northern Dancer 5 x 5 Princely Gift 5 x 5
父はオルフェーヴルやドリームジャーニーなど芝中長距離で活躍する産駒を多く輩出するステイゴールド。
母は中央で1勝のポイントフラッグ。チューリップ賞(GⅢ)で2着の経験がある。
母父は史上最強のステイヤーとも称されるメジロマックイーン。
母系は日本有数の土着牝系である星旗にたどり着く。近年は活躍馬に恵まれていないが、過去には日本ダービーを優勝し6年連続リーディングサイアーにも輝いたクモハタや、日本調教馬として初の国外重賞を優勝したハクチカラなど、数多くの活躍馬を輩出していた名牝系の一つである。
現役時代
デビューは2011年7月9日、函館芝1800m。単勝2番人気だったが、後方から追走すると上がり3ハロン1位の末脚を繰り出し、アタマ差でレコード勝ち。2戦目のコスモス賞(OP)は単勝1.2倍の圧倒的1番人気に応え優勝。
しかし、3戦目の札幌2歳ステークス(GⅢ)、4戦目のラジオNIKKEIステークス(GⅢ)ではともに後方から追走するものの、あと一歩及ばず2戦とも2着に敗れ2歳シーズンを終える。
3歳初戦は共同通信杯(GⅢ)から始動。レースでは3,4番手で先行すると、直線では抜け出し2着のディープブリランテに1馬身4分の3馬身差をつけ快勝。
3歳2戦目は皐月賞(GⅠ)に出走。前日の大雨で馬場の内がかなり荒れて全馬が内を避ける中、最後方を追走。すると、3コーナーからはあえて荒れた内を通りポジションを上げると、直線に入った段階で一気に3番手に。直線では残り200m地点をすぎて先頭に立つと、そのまま後続を突き放し2着のワールドエースに2馬身2分の1差をつけ優勝した。
3歳3戦目の日本ダービー(GⅠ)では後方から上がり3ハロン1位の末脚を繰り出すも、追い上げ及ばず5着に敗れる。
夏は休養に充て、3歳4戦目は神戸新聞杯(GⅡ)に出走し快勝、菊花賞(GⅠ)へ駒を進める。
単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持され、レースでは後方待機。2週目向こう正面で一気に捲ると、3~4コーナーでは3番手付近に進出。直線に入り先頭に躍り出ると後続を突き放し、2着のスカイディグニティに1馬身4分の3差をつけ優勝、GⅠ2勝目を挙げた。
勢いそのままで3歳6戦目は有馬記念(GⅠ)に出走。いつも通り後方から追走すると、3~4コーナーで大外を捲りポジションを上げる。直線では外に進路と取り、オーシャンブルーやルーラーシップとの決め手比べに競り勝ち、2着に1馬身2分の1差をつけ優勝、GⅠ3勝目を挙げ3歳シーズンを終えた。
4歳時は阪神大賞典(GⅡ)に出走し快勝。続いて天皇賞・春(GⅠ)に出走し単勝1.3倍の圧倒的人気に支持されたが、高速馬場が合わなかったためか5着に敗れる。
4歳3戦目は宝塚記念(GⅠ)にファン投票2位で出走。スタート良くジェンティルドンナをマークする形で先行。すると直線ではジェンティルドンナを交わし、残り200m地点では先行するダノンバラードを突き放してリードを広げ、2着に3馬身2分の1差をつけ快勝、GⅠ4勝目を挙げた。
しかし、4歳4戦目の京都大賞典(GⅡ)は5着、5戦目のジャパンカップ(GⅠ)は15着、そして6戦目の有馬記念は3着に敗れ4歳シーズンを終える。
5歳時は昨年と同じく阪神大賞典から始動し快勝。しかし、5歳2戦目の天皇賞・春は出遅れが響き7着に大敗。
5歳3戦目も昨年と同じく宝塚記念に出走。スタートは出遅れたがリカバリーし先行する形。3~4コーナーから直線にかけてはもたつく場面も見られたが、徐々に加速すると残り200m過ぎから後続を一気に突き放し、2着のカレンミロティックに3馬身差をつけ快勝、GⅠ5勝目を挙げた。
その後は札幌記念(GⅡ)を叩き台に凱旋門賞(仏GⅠ)へ出走するものの14着に大敗。
帰国後は有馬記念に出走したが、スローペースが合わなかったためか3着に敗れ5歳シーズンを終える。
6歳初戦はアメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)に出走するものの、いいところなく7着に大敗。
6歳2戦目は3年連続で阪神大賞典に出走。速めのスパートから直線で抜け出すと、2着のデニムアンドルビーに1馬身4分の1差をつけ3年連続優勝。
6歳3戦目はこちらも3年連続で天皇賞・春に出走。ゲート入りを嫌がり後方からスタートになるが、2週目向こう正面から進出すると一気に先行集団へ。直線では逃げ粘るカレンミロティックを残り50m地点で交わし、追い込んできたフェイムゲームを振り切り優勝、GⅠ6勝目を挙げた。
その後は6歳シーズン一杯で引退が発表され、宝塚記念は大出遅れで15着、ジャパンカップは高速馬場が合わないためか10着、有馬記念はスローペースが合わないためか8着に敗れ引退。ビッグレッドファームにて種牡馬入りした。
GⅠで優勝した距離は2000m~3200m。馬場状態の発表が良のレースに出走することが多かったが、荒れた馬場や良でも軟らかくタフな馬場ではめっぽう強く、宝塚記念は2連覇、阪神大賞典は3連覇した。
上がり3ハロン1位を記録したレースも多かったが、重賞で優勝した時はほとんどが34秒台後半から35秒台だった。上がりが遅いレースが得意で、日本ダービーやジャパンカップ、スローペースの有馬記念ではキレ負けした。
主な勝ち鞍
- 皐月賞(GⅠ/2012)
- 菊花賞(GⅠ/2012)
- 有馬記念(GⅠ/2012)
- 宝塚記念(GⅠ/2013,2014)
- 天皇賞・春(GⅠ/2015)
- 神戸新聞杯(GⅡ/2012)
- 阪神大賞典(GⅡ/2013,2014,2015)
- 共同通信杯(GⅢ/2012)
代表産駒
- 2017年産駒
・ブラックホール(札幌2歳ステークス・GⅢ/2019)
・ウインキートス(目黒記念・GⅡ/2021、2022年5月末時点)
- 2018年産駒
・ユーバーレーベン(オークス・GⅠ/2021、2022年5月末時点)
ゴールドシップ産駒の特徴
距離適正
芝
2019,6,1~2022,5,31
短距離を走る産駒もちらほらいるが、基本的には牡馬も牝馬も中長距離を得意とする産駒が多い。
牡馬は1200mの勝ち星はなく、1400mも1勝のみ。1600mは3勝しているがすべてクロノメーターによるものなので、基本的には1600m以下は忙しいようだ。1800m以上になると勝ち星が増え、そのほぼすべてが上がり3ハロン3位以内かつ、34秒台後半よりも遅い上がりを記録している。つまり、中距離以上、上がりが遅いレース展開、その中で上位の上がりを使えると好走するパターンだ。ゴールドシップの現役時代と同じイメージでいいだろう。
牝馬もおおむね同じような感じだが、オークスを制したユーバーレーベンは上がり3ハロンが33秒台を記録したレースがあるように、一部の産駒は速い上がりを使える場合がある。
ただ、基本的にはゴールドシップの現役時代のように中距離以上で上がりが遅い展開になると、外から追い込んでくるイメージでいいだろう。
ダート
2019,6,1~2022,5,31
ダートも一部の産駒は短距離も走るが、出走数は1800mがダントツで多いように中距離以上が良いようだ。
特に1900mや2400mは出走数が少ないながらも勝ち馬が出ているように、今後は長距離の成績が伸びそうな雰囲気がある。芝と同じように中長距離が得意と思って良さそうだ。
馬場適正
若駒戦、芝とダートの割合
2019,6,1~2022,5,31
古馬、芝とダートの割合
2020,6,1~2022,5,31
出走数は芝の方が断然多いが、勝率はほぼ変わらない。
現役時代のゴールドシップのイメージが強いからか、デビューから芝を使われることが多く、それが世代限定戦の芝の勝利数の多さにつながっているのだろう。
しかしダートを得意とする産駒もちらほらと出ている。特にマリオマッハーはデビューからほぼダートで使われ、2021年の1月に3勝クラスを勝利しオープン馬となった。
ただ、ダートで走る産駒は牝系がダート向きの場合がほとんどだ。マリオマッハーの母は2009年のTCK女王盃(GⅢ)を優勝したヤマトマリオンで、マリオマッハーのきょうだいもすべてダートで勝ち上がっているダート血統である。他のダートで勝ち上がった産駒もほぼすべてがダート血統となっており、ダートを走るには牝系からの適性が重要だ。
そのため、基本的には芝向きと思える産駒が多い。パンパンの良馬場ではスピード負けするケースが目立つが、道悪だったり、荒れた馬場で激走することがあるので注意したい。
ダートは父のステイゴールドと同じくらい空っ下手と言っていい。ゴールドシップは基本的には芝血統である。
コース適正
芝
2019,6,1~2022,5,31
基本的には時計も上がりも遅くなりやすいローカルの競馬場が得意で、時計が速くなりやすい中央4場が苦手な傾向となっている。
ローカルは中京を除いてどこでも走り、特に福島の成績が良い。福島芝は他の競馬場と比べると馬場が傷みやすくアップダウンもあるため、スタミナ比べが得意なゴールドシップ産駒に合うのだろう。しかも福島芝2600mは勝率18.5%、単勝回収率119%となっているため狙い目だ。
中京が苦手な理由は分からない。2,3着はそれなりの数があるので、そのうち勝ち星も増えてくる可能性がある。
中央の中でも中山は勝ち切れない傾向だ。データ集計期間内だと1着が10回に対し、2着35回、3着19回となっている。最近の中山競馬場の路盤は状態が良く速い時計が出ることが多いので、キレ負けして勝ち切れないのかもしれない。
馬場状態は悪化したほうが成績が良い。データ集計期間内だと、良馬場の勝率が6.1%に対し、重だと2ポイント以上勝率が上がる。良馬場でも芝が傷んで時計が遅くなるようだと好走する傾向なので、ゴールドシップの現役時代のイメージがそのまま当てはまりそうだ。
ダート
2019,6,1~2022,5,31
ダート福島、中山、中京、阪神の成績が良い方だ。福島を除く3場は最後の直線に急坂があり、福島は道中のアップダウンが多いので、タフになりやすい競馬場が得意なのだろう。
東京はまったくと言っていいほど走らない。データ修正期間内だと、のべ31回出走し勝ち馬は無し、2着も無し、3着が1回と散々な成績となっている。東京ダートは最後の直線が長く速い上がりが要求されるので、そういったコースは苦手なのだろう。
牡牝の勝利数の違い
若駒戦
2019,6,1~2022,5,31
古馬
2020,6,1~2022,5,31
勝利数は牡馬の方が少し多いが、勝率は牝馬の方が少し高い。平均的か、少し牝馬優勢と言えるだろう。
ただ、牡馬も牝馬も仕上がりの早さや成長度などに違いはなく、牡牝の違いをあまり気にしない方が良さそうだ。
た基本的にはスタミナやパワーがある種牡馬は牡馬の成績が良くなることが多いので、ゴールドシップも牡馬の成績がそのうち段々と上がってくる可能性がある。
クラス別勝利数
芝
2019,6,1~2022,5,31
ダート
2019,6,1~2022,5,31
芝は新馬の勝率が少し低めだが誤差の範囲内だろう。特にクラスによっての違いはない。
ただ、重賞はなかなか勝ち切れない傾向があり、1着が3回に対し、2着3回、3着7回となっている。好内容のレースをするものの、キレ負けて勝ち切れないケースが目立つ。おそらく2~5着が多くなるタイプなのではないだろうか?
ダートはデータが少なく傾向は分からない。
母父の血統
芝
2019,6,1~2022,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ネイティヴD系=ネイティブダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
マイネル軍団や日高地方の生産馬が多いためか、ロイヤルチャージャー系のロージズインメイやロベルト系との相性が良い。他にも非流行血統のスタミナ型との配合で好走することが多いので、スタミナやパワーがある血統との配合が良いのかもしれない。
一方、フォーティナイナー系や、ネイティブダンサー系のマイネルラヴ、ノーザンダンサー系のクロフネなど、短距離血統との相性が悪い。データ集計期間内では、フォーティナイナー系はのべ45回出走し勝ち馬は0、マイネルラヴは42回で勝ち鞍2、クロフネは28回で勝ち鞍1となっている。父からはスタミナ、母系からはスピードという意図で配合したのだと思われるが、今のところは母父短距離血統との配合はあまり合わないようだ。
ダート
2019,6,1~2022,5,31
ノーザンD系=ノーザンダンサー系 ネイティヴD系=ネイティブダンサー系 ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系
ダートはデータが少なく分析が難しいが、ノーザンダンサー系との相性が良いようだ。一般的にノーザンダンサー系はパワーに優れた傾向があるので、それが良い方向に作用するのかもしれない。
成長度
2019,6,1~2022,5,31
まだデータは少ないが仕上がりは早め。しかし、3,4歳になっても勝率が落ちないことから成長力はありそうだ。5歳の勝利数や勝率が低いのはまだ産駒が少ないからだろう。
ゴールドシップ産駒の特徴まとめ
- 距離適性は芝もダートも中長距離が得意で、短距離は苦手な傾向
- 馬場適正は芝向き、ダートは空っ下手
- 芝のコース適正はローカルが得意で、特に福島はかなり得意
- 芝は道悪や荒れた馬場が得意
- 牡牝の勝利数はほぼ平均的かやや牝馬優勢
- 上級条件ではキレ負けして勝ち切れないケースが目立つ
- 成長度は、仕上がりは早めだが成長力もありそう
個人的に考えるゴールドシップ産駒の特徴
ゴールドシップ産駒が得意な芝のバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場は渋ったり荒れていた方が良い。代表産駒のブラックホールも札幌2歳ステークスを優勝した時はやや重だったし、他も上級条件で好走した産駒は渋った馬場のケースが多い。ゴールドシップの現役時代に似た産駒が多い印象だ。
上がりも遅い方が良い。勝ち馬の多くは、上がり3ハロンが34秒台後半よりも遅い上がりで追い込んで勝利するのがほとんどなので、上がりが遅くならないと厳しい。
枠は外の方が良さそうだ。データではあまり傾向が出ていないが、スタートが下手で差し馬が多いので、外枠の方がレースがスムーズにできそうだ。
直線の伸びは外伸びの方が良さそうだ。不器用な差し馬が多いので、外伸びの方がレースがしやすそうだ。
前後は差し有利の方が良さそうだ。スタートが下手な産駒が多いので、差し有利の馬場の方が巻き返しやすい。
出走した半数以上の産駒が芦毛で、レースを見ているとゴールドシップの現役時代と錯覚するような感じもある。基本的にはゴールドシップの現役時代と似たような産駒が多くなっている。