トラックバイアス&血統研究

トラックバイアス(馬場のクセ)と血統を研究

【パイロ】種牡馬の特徴 基本は短距離中心だが牡馬は配合次第で中長距離も!(2023,9,1更新)

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現役時代は米国ダートのマイル前後で活躍したパイロ。引退後は日本に"新車"として輸入され種牡馬入りすると、当時は貴重なPulpitの後継種牡馬として人気となり、地方競馬ではファーストシーズンチャンピオンサイアーとなった。その後もコンスタントにダートで活躍馬を出しており、2021年にはミューチャリーがJBCクラシック(GⅠ)を優勝し産駒初のGⅠ級の産駒を輩出した。

ここでは、パイロ産駒の特徴を紹介する。

 

 

【目次】

 

 

 

血統

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Native Dancer 5 x 5

父はPulpit(プルピット)。産駒には本馬の他、北米リーディングサイアーとなったTapit(タピット)や武蔵野ステークス(GⅢ)を制したピットファイターなどがいる。

母は北米ダート6Fで1勝のWILD VISION(ワイルドヴィジョン)。

母父は第一回ブリーダーズカップ・クラシックで優勝したWild Again(ワイルドアゲイン)。産駒には日本で種牡馬として活躍したワイルドラッシュがいる。

 

半妹に米ダート8.5Fの重賞勝ちのあるWar Echo(ウォーエコー)。

 

近親には

  • MUNITIONS(ジェベル賞/仏GⅢ)
  • WILD WONDER(マーヴィンリロイH/米GⅡなど)
  • Olympio(ハリウッドダービー/米GⅠなど)
  • TAPIZAR(ブリーダーズカップ・ダートマイル/米GⅠなど)

など、他にも数多くの活躍馬がいる。

 

父のPulpitは、米国ダートで数多く活躍馬を輩出する名種牡馬・Tapit(タピット)と同じである。父の父A.P. Indy(エーピーインディ)、3代父Seattle Slew(シアトルスルー)へと遡る系統は、現在の米国では最も勢いのある血統となっている。日本でも近年この系統の種牡馬が増えており、米国血統らしくダート向きの産駒を輩出することが多い。

母父Wild Againはノーザンダンサーを経ないNearctic(ニアークティック)系という異系の血統である。種牡馬としては短~中距離のダートを走る産駒が中心だが、ナリタキングオー(京都新聞杯/GⅡ)のような芝を走る産駒も稀に出す。基本的には仕上がりが早く、しかも異系の血統を多く含んでいるため成長力がある産駒を多く輩出する。

牝系は米国ダートで活躍する馬が多いが、欧米の芝コースを走ることも少なくない。ただ、どちらも短距離~マイルで走る馬が中心となっており、スピードが豊富な牝系のようだ。

父系にはMr. Prospector(ミスタープロスペクター)の血が内包されているが、それ以外は日本では異系の血統が多いので、日本では配合牝馬を選びやすい種牡馬となっている。

 

 

現役時代

デビューは2歳7月のダート6F戦でハナ差の勝利。

その後はシャンペンステークス(米GⅠ/ダート8F)とブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(米GⅠ/ダート8F)に出走するものの、共にWar Pass(ウォーパス)の2着に敗れ2歳シーズンを終える。

3歳は、リズンスターステークス(米GⅢ/ダート8.5F)、ルイジアナダービー(米GⅡ/ダート8.5F)を2連勝する好スタート。

しかし、次走のブルーグラスステークス(米GⅠ/AW9F)はオールウェザーが合わなかったためか1番人気ながら10着に敗れる。

そして次走はケンタッキーダービー(米GⅠ/ダート10F)に挑戦。しかし、3番人気に支持されたものの距離の壁か8着の大敗。

その後、3歳時はノーザンダンサーターフステークス(米GⅢ/ダート8.5F)で優勝したが、トラヴァーズステークス(米GⅠ/ダート10F)が3着、インディアナダービー(米GⅡ/ダート8.5F)が2着など勝ち切れず、3歳シーズンを終え9か月の休養に入る。

4歳の初戦、ダート7ハロンのジェームズマーヴィンステークスは休養明けのためか2着に敗れる。

そして2戦目、フォアゴーステークス(米GⅠ/ダート7F)は後方からレースを進めたものの、直線で一気に抜け出し念願の初GⅠ制覇となった。

その後はブリーダーズカップ・ダートマイル(米GⅠ/AW8F)とシガーマイルハンデキャップ(米GⅠ/ダート8F)に出走するものの、それぞれ10着、5着に敗れ、4歳一杯で現役を引退し、”新車”としてダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックスにて種牡馬入りすることとなった。

出走距離はダート6F~10F。重賞優勝距離はダート7F~8.5Fと、マイル前後で活躍した。

 

 

 

主な勝ち鞍

  • フォアゴーステークス(米GⅠ・ダート7F/2009)
  • ルイジアナダービー(米GⅡ・ダート8.5F/2008)
  • リズンスターステークス(米GⅢ・ダート8.5F/2008)
  • ノーザンダンサーステークス(米GⅢ・ダート8.5F/2008)

 

 

代表産駒

  • 2011年産駒

・シゲルカガ(北海道スプリントカップ・GⅢ/2015)

  • 2013年産駒

・ビービーバーレル(フェアリーステークス・GⅢ/2016)

  • 2016年産駒

・ラインカリーナ(関東オークス・GⅢ/2019)

・デルマルーヴル(名古屋グランプリ・GⅡ/2019、他重賞1勝)

・ミューチャリー(JBCクラシック・GⅠ/2021)

・ケイアイパープル(白山大賞典・GⅢ/2022、他重賞1勝、2023年8月末現在)

  • 2017年産駒

・ケンシンコウ(レパードステークス・GⅢ/2020、2023年8月末現在)

・メイショウハリオ(帝王賞・GⅠ/2022,2023、他GⅠ1勝、重賞2勝、2023年8月末現在)

 

 

 

 

 

パイロ産駒の特徴

距離適正

2013,6,1~2023,5,31

芝は出走数が少ないので、若駒戦と古馬のデータをまとめた。

パイロの現役時代はマイル前後が中心だったが、産駒は短距離~マイルとなっている。これはおそらく、父系、牝系、そして母父がすべて短距離で活躍する産駒が多いからだと思われる。

1800m以上は馬券絡みが4回しかないので、短距離血統と思っていいだろう。

 

若駒戦、ダート

2013,6,1~2023,5,31

 

古馬、ダート

2014,6,1~2023,5,31

勝ち鞍の約3分の2が1400m以下なので、短距離血統と思っていいだろう。

ただ、牡馬は短距離から中長距離まで勝率があまり変わらないのに対し、牝馬は勝ち鞍のほとんどが1400m以下となっている。牡馬は配合次第で距離をこなせる産駒が出るが、牝馬は短距離が中心だ。

産駒が重賞で優勝した距離も、北海道スプリントカップの1200mから、名古屋グランプリの2500mまで幅広い。気性が前向きな産駒が多いので基本は短距離が多いが、折り合いと配合次第では中長距離まで走る場合がある。

 

 

馬場適正

若駒戦、芝とダートの割合

2013,6,1~2023,5,31

 

古馬、芝とダートの割合

2014,6,1~2023,5,31

勝ち鞍の約9割がダートなので完全なダート血統である。

ただ、代表産駒のビービーバーレルがフェアリーステークスで優勝しているように、芝がまったくダメな訳ではない。2歳時だったり、ダートの短距離でスピードを見せている馬は芝で走る場合があるので注意したい。

しかし、基本はダートが中心である。父系のA.P. Indy系、もしくはSeattle Slew系は芝で走る場合もあるが、日本ではダート向きの産駒がほとんどだ。アメリカのクラシック血統なので、ダート血統と思っていいだろう。

 

 

コース適正

2013,6,1~2023,5,31

 

芝は出走数が少ないので、若駒戦と古馬のデータをまとめた。

中央4場の数字が低くローカルが高めとなっているので、速い時計のレースが苦手なのだろう。個別の産駒を見てもパンパンの良馬場ではスピード負けするケースが目立ち、良馬場でも馬場が荒れていたり道悪になったりすると好走することが多い。

競馬場による得意不得意よりも時計の出方を気にした方がよさそうだ。

 

若駒戦、ダート

2013,6,1~2023,5,31

 

古馬、ダート

2014,6,1~2023,5,31

あまり得意不得意があるタイプでないが、直線に坂があるコースが苦手で、無いコースが得意という傾向だ。

例えば、直線に急坂がある中山ダート1200mの勝率が6.9%なのに対し、坂が無い京都ダート1200mは12.1%となっている。パイロ産駒はパワーよりもスピードに優れたタイプが多いので、このような結果になるのだろう。

あとは1400mと1700mのコースがある競馬場が得意な傾向だ。パイロ産駒はどちらかというとスプリント血統だが、サウスヴィグラスほどのスプリンターではない。1200mでは短く1800mでは長いというタイプが多いので、一本調子で走れる1400mと1700mが得意なのだろう。特に牝馬は1400mで走り、牡馬は1700mで走るケースが目立つ。

 

 

牡牝の勝利数の違い

若駒戦

2013,6,1~2023,5,31

 

古馬

2014,6,1~2023,5,31

少し牡馬の数字の方が高いが、おおむね平均並みである。牝馬の方が少し仕上がりが早く、芝向きの産駒も少し多いくらいだ。特に牡馬と牝馬の違いによる特徴はない。

 

 

 

 

 

クラス別勝利数

2013,6,1~2023,5,31

 

ダート

2013,6,1~2023,5,31

気性が激しい産駒が多いからか2歳の早い時期から仕上がり、持ち前のスピードで新馬戦から活躍する。2歳から3歳の前半くらいであれば芝でもスピードで通用し、3歳1月のフェアリーステークス(GⅢ)ではビービーバーレルが逃げ切り勝ちを収めた。

クラスが上がる毎に勝率が下がるのは、スピードを生かした一本調子のタイプが多いからだろう。

 

 

母父の血統

2013,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

芝はデータが少なく分析が難しいが、短距離血統との相性が若干良いようだ。ただ、特にこれといった特徴はデータが少ないため見つからない。

 

若駒戦、ダート

2013,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

古馬、ダート

2014,6,1~2023,5,31

ノーザンD系=ノーザンダンサー系  ロイヤルC系=ロイヤルチャージャー系

 

どの系統との相性が良いというのは少ないが、おおまかに米国ダート血統との相性が良い。

特に母父Coronado's Quest(コロナドズクエスト)は5頭がデビューし4頭が勝ち上がるなど好相性だ。他にもシアトルスズカ、アフリートなどの勝率が高くなっており、特にスピードタイプのナスルーラ系の血を内包している母父との相性が良い。

相性が悪い母父も少ないが、おおまかに欧州選手権距離の芝血統との相性が悪い傾向だ。ただ、まったく走らないことはないのであまり気にしなくてもよさそうだ。

 

 

成長度

2013,6,1~2023,5,31

上記の通り2歳戦からスピード全開で仕上がりが早い。ダートの新馬戦が増える7月後半頃から勝ち鞍が増え、勝ち上がる馬は新馬から3戦目以内で未勝利を脱出し、その勢いで1勝クラスを突破する産駒も多い。

これほど仕上がりが早いと早熟っぽい印象があるが、パワータイプの牡馬は3歳になって勝ち上がり、徐々に力をつけるタイプも多い。単なるスピードタイプはキャリアを重ねると尻すぼみになることがあるが、徐々に力をつけるパワータイプは叩かれて上昇し、4歳中盤から5歳前半までは活躍する。

ただ、5歳後半以降は衰えを隠せなくなり、成績が一気に落ちる。実際にオープンクラスや重賞での勝利は5歳までがほとんどで、6歳以降は惨敗するケースが目立つ。

単なる早熟血統ではなくある程度の成長力はあるが、長く活躍する産駒は少ない。

 

 

パイロ産駒の特徴まとめ

  • 距離適性は、牡馬は配合次第、牝馬は短距離が中心
  • 勝ち鞍の約9割がダートの完全なダート血統
  • 一本調子のスピードタイプが多い
  • 2歳から活躍する早熟性と一定程度の成長力があるが、長く活躍する産駒は少ない

 

 

個人的に考える~産駒の特徴

パイロ産駒が得意なダートのバイアスは、

  • 馬場    軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
  • 上がり   速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
  • 枠     超内、内、フラット、外、超外
  • 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
  • 前後    超前、前、展開次第、差し、超差し

と想定している。

馬場は乾いても湿ってもあまり変わらない。ただタイプによっては多少の違いが出て、スピードタイプは少し湿ったほうが良く、パワータイプは乾いた方が良い。産駒のタイプによって臨機応変に対応したい。

上がりは少し遅い方が良い。一本調子の逃げ先行タイプが多いため、上がりが速くなるとキレ負けするケースが目立つ。

枠はどちらかというと外枠の方が良い。勝率は内枠でも外枠でもあまり変わらないが、連対率はあきらかに外枠の方が高く、1~4枠の連対率は13.1%に対し、5~8枠は17.2%となっている。複勝率も外枠の方が高いため、内枠から外枠替わりには注意したい。

直線の伸びはどちらかというと内伸びの方が良い。一本調子の逃げ先行タイプが多いため、差し馬が台頭する外伸びだとあまり良くない。

前後は前有利の方が良い。一本調子の逃げ先行タイプが多いため、そのまま押し切れる前残りのバイアスが得意だ。

 

種牡馬のタイプとしてはサウスヴィグラスに近いが、もう少し長い距離を走れる産駒が多く距離適性は広い。ただ基本的には短距離向きの産駒が多いため、今後はもっと短距離で存在感が大きくなる可能性がある。

 

 

 

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