フジキセキ産駒ながらオーストラリアで生まれたため遅生まれだったキンシャサノキセキ。デビューは意外と早かったが前向きすぎる気性のため出世は遅れ、GⅠを初優勝したのは7歳時だった。2011年に引退、種牡馬入りし、今やフジキセキの後傾種牡馬として多くの活躍馬を輩出している。
ここでは、キンシャサノキセキ産駒の特徴を紹介する。
【目次】
血統
クロスなし
父はFuji Kiseki(フジキセキ)。現役時は朝日杯3歳ステークス(GⅠ)で優勝。産駒にはコイウタやダノンシャンティ、カネヒキリなど短距離~マイルやダートで活躍する産駒を多く輩出している。
母はKeltshaan。不出走。
母父はアメリカの二冠馬にしてエクリプス賞最優秀3歳牡馬のPleasant Colony(プレザントコロニー)。
3代母はフランスの3100mのGⅠを優勝したLady Berry。
近親には、
- Groom Dancer(リュパン賞/仏・GⅠ)
- Plumania(サンクルー大賞/仏・GⅠ)
- Indian Rose(ヴェルメイユ賞/仏・GⅠ)
- Vert Amande(ガネー賞/仏・GⅠ)
などがいる。フランスで活躍馬を多く輩出する一族だが、他にもオーストラリアやアメリカでも活躍馬が出ているらしい。
キンシャサノキセキは、フジキセキがオーストラリアにシャトル種牡馬として渡った時に母のKeltshaanと配合されて誕生した。そのため外国産馬となり父の表記がFuji Kisekiとなっている。
3100mのGⅠを優勝した3代母のLady Berryに、Lyphard、Pleasant Colonyを配合して誕生したのが母・Keltshaanである。
Lyphardはダンシングブレーヴなどを輩出したようにスタミナを伝え、Pleasant Colonyも馬場を問わず中長距離の活躍馬を輩出する種牡馬である。
しかし、Keltshaanにフジキセキを配合して誕生したのが短距離で活躍したキンシャサノキセキだ。おそらく、短距離適正はフジキセキから、晩年まで活躍した成長力は牝系から遺伝したものだろう。
現役時代
キンシャサノキセキはオーストラリア産のため9月の遅生まれである。しかし、デビューは12月であるためそのわりにはかなり早い部類だ。
そのデビュー戦は12月の中山芝1200m。スローペースだったが2着に2馬身以上の差をつけ快勝。1ヵ月後の芝1600m・ジュニアカップ(OP)では、この時期の3歳馬にしては破格の1分33秒6で優勝。
しかし、その後の3歳戦はマイル重賞を中心に使われ人気を集めるも勝ちきれず。秋に1600万条件を快勝し3歳シーズンを終えた。
4歳時は1200m~1600mのレースに使われ、OPを2勝。
5歳時は函館スプリントステークス(GⅢ)で人気に応え優勝しスプリンターズステークス(GⅠ)に出走するものの、スリープレスナイトの2着に敗れる。
6歳時はオーシャンステークス(GⅢ)から始動するものの、3戦連続で2桁着順に敗れる。しかし、スワンステークス(GⅡ)で復活優勝すると本格化。
阪神カップ(GⅡ)と、年が明けて7歳になりオーシャンステークスも優勝し重賞3連勝を達成。勢いそのまま高松宮記念(GⅠ)に出走する。
五分にスタートを切ると先行集団を伺う位置につけ、手ごたえよく最後の直線へ。残り100m付近で先頭に立ち追いすがるビービーガルダンを抑え優勝し、7歳でGⅠを初制覇した。
その後はスプリンターズステークス(GⅠ)にも出走したがウルトラファンタジーの2着に敗れる。
そして8歳時、連覇を目指し阪神競馬場で行われた高松宮記念に出走すると、スタート良く3~4番手につける。最後の直線では粘るダッシャーゴーゴーを残り100mでかわし、追い込んできたサンカルロを1馬身4分の1抑え史上初の連覇を遂げた。
レース後はスプリンターズステークス出走や海外挑戦も検討されていたが、高松宮記念を連覇したことと、父のフジキセキの種付け中止もあり引退、種牡馬入りが決定。父と同じく社台スタリオンステーションでの繋養が決まった。
出走したのはすべて1600m以下である。しかし、重賞を優勝した距離は1400m以下となっている。
配合的にはもう少し長い距離を走れそうだが、前向きすぎる気性から出世が遅れ、スプリント路線が中心だった。
主な勝ち鞍
- 高松宮記念(GⅠ/2010、2011)
- 阪神カップ(GⅡ/2009、2010)
- スワンステークス(GⅡ/2009)
- 函館スプリントステークス(GⅢ/2008)
- オーシャンステークス(GⅢ/2010)
代表産駒
- 2013年産駒
・シュウジ(阪神カップ・GⅡ/2016、他重賞1勝)
- 2014年産駒
・モンドキャンノ(京王杯2歳ステークス・GⅡ/2016)
・サクセスエナジー(さきたま杯・GⅡ/2018、他重賞4勝)
- 2015年産駒
・カシアス(函館2歳ステークス・GⅢ/2017)
・ベルーガ(ファンタジーステークス・GⅢ/2017)
・ヒラボクラターシュ(佐賀記念・GⅢ/2019)
- 2017年産駒
・ガロアクリーク(スプリングステークス・GⅡ/2020、2023年7月末時点)
・ルフトシュトローム(ニュージーランドトロフィー・GⅡ、2023年7月末時点)
- 2020年産駒
・リバーラ(ファンタジーステークス・GⅢ/2022、2023年7月末時点)
キンシャサノキセキ産駒の特徴
距離適正
若駒戦、芝
2014.6.1~2023.5.31
古馬、芝
2015.6.1~2023.5.31
完全に短距離が中心である。
自身の現役時代と同じく、産駒も前向きすぎる気性の馬が多い。スタートが上手く先行、好位につけ、そのまま押し切るのがパターンだ。
マイル以上の距離を走れるかは、折り合いがつくかどうかで決まる。前向きすぎる気性で一気に走ってしまうと一時期のシュウジのように短距離でも暴走してしまうが、折り合いがつくようになるとマイル以上も走る場合がある。
芝で2400m以上の長距離を走っているのはウインブルーローズのみ。牝系が強く遺伝しない限り、長距離は向かないようだ。
馬場は重くても軽くても走れるが、重以上になると2着止まりが多い。あまりにタフ過ぎると自慢のスピードが生かせないようだ。
若駒戦、ダート
2014.6.1~2023.5.31
古馬、ダート
2015.6.1~2023.5.31
ダートも短距離が多いが中長距離も走る。
芝の場合は2歳戦からスピード全快で勝ち上がるケースが多いが、ダートの場合は勝ち上がるのに苦労し、徐々に力を付けるパターンが多い。他にも、芝で頭打ちになった馬がダートに矛先を変えることも目立つ。
芝と同じく前向きな気性の馬はシュウジのように短距離がメインだが、折り合いがつくと中長距離を走る。
中長距離がメインの馬は、デビューから中長距離で走る馬が多いが、まれに短距離でスピード不足の馬が中長距離に鞍替えして走るパターンもある。ただ、全体的には穴をあけることは少ない。
馬場適正
若駒戦、芝とダートの割合
2014.6.1~2023.5.31
古馬、芝とダートの割合
2015.6.1~2023.5.31
大まかにだが、デビューは芝の短距離が多い。まずは芝で使ってみて、強い勝ち方をする馬は2歳重賞でも好走し、3歳でもまあまあ走る。ただ、古馬になってからは成績が尻すぼみになり、そのまま引退するかダートへ鞍替えするパターンが多い。
引退やダートへ鞍替えせずに芝にそのまま使われる馬もいるが、大半は古馬になると勝ちきれない。気性が前向きすぎて同じ凡走の仕方を繰り返したり、成長力不足で伸び悩む。そのため、芝の4歳の単勝回収率はたったの21%である。
ダートは、芝ではスピード不足で通用しなかった馬がダートへ鞍替えし、一歩一歩着実に力を付けながら出世するパターンが多い。2歳戦から能力全快の馬は稀である。
基本的には、早いうちには芝で勝利を挙げるが、古馬になるとダートへ鞍替えし勝利を挙げるパターンが多い。
コース適正
若駒戦、芝
2014.6.1~2023.5.31
古馬、芝
2015.6.1~2023.5.31
あまりどこが得意というのはないが、強いて言えばコーナーがきつい競馬場が得意。
父のフジキセキ産駒が器用だったように、キンシャサノキセキ産駒も器用な産駒が多く、コーナリングが上手いためコーナーがきつい競馬場が得意なのだろう。ただ、折り合いがつくタイプは広い競馬場でも走れる。
若駒戦、ダート
2014.6.1~2023.5.31
古馬、ダート
2015.6.1~2023.5.31
ダートもあまりどこが得意というのはないが、強いて言えばコーナーが広い中央4場が得意。
勝利数が一番多いのは中山ダート1200mだが、勝率が高いのは京都ダート1200mと1400mだ。自慢のスピードを生かせる平坦コースが得意なのだろう。
牡牝の勝利数の違い
若駒戦
2014.6.1~2023.5.31
古馬
2015.6.1~2023.5.31
若駒戦のうちはあまり変わらないが、古馬になると牡馬が優勢になる。
2,3歳戦のうちはスピードが生かせる牝馬も走るが、古馬になってダートに鞍替えするとパワーが必要な牡馬の方が走るようになるのだろう。
ちなみに、キンシャサノキセキ産駒は馬格がある方が走る。牝馬も馬格がある方が走るため、性別よりも馬格の方が重要なのかもしれない。
クラス別勝利数
芝
2014.6.1~2023.5.31
ダート
2014.6.1~2023.5.31
3勝クラスの勝率が低くなっている。20勝に対して、2着が36回、3着が41回とびっくりするくらい勝ちきれない。レースは上手いが決め手がない馬が多いので、この結果になっているのだろう。
牡牝ともにまだGⅠの勝利がない。芝で優勝できるのは2,3歳戦のマイルになるのだろうが、シュウジのように気性が前向きで折り合いが難しい産駒が多いため距離が長く優勝できていない。古馬になってからは成長力に問題があるため、スプリントGⅠは難しいのではないか。
ダートはそのうちGⅠの勝利を挙げそうだ。距離の融通が効き、古馬になってからの成長力があるため、地方交流重賞でGⅠ優勝する産駒が出てくるだろう。中央は短距離GⅠがないため難しいのではないか。
母父の血統
若駒戦、芝
2014.6.1~2023.5.31
古馬、芝
2015.6.1~2023.5.31
タイキシャトル、デインヒル、Kingmambo、サクラバクシンオーといった短距離血統との相性が良い。代表産駒のシュウジの母父がKingmamboのように、スピードを補強する配合が良いようだ。
ロイヤルチャージャー系との相性も良い。特にタイキシャトルとの相性は抜群で、ニックスと言えるだろう。Heloの4×4のクロスが発生するので、それが良い影響を与えているのかもしれない。あと、タイキシャトルとの配合では何故か晩成傾向になる。
古馬になるとミスタープロスペクター系との相性が悪い。古馬の勝利数がたった2勝だけであるため、ニックスとは逆の作用が働いているのかもしれない。
ノーザンダンサー系では、サドラーズウェルズ系とヌレイエフ系との相性が悪い。サドラーズウェルズ系は4勝で勝率2.4%、ヌレイエフ系は2勝で2.8%となっている。こちらもニックスとは逆の作用が働いているのかもしれない。
若駒戦、ダート
2014.6.1~2023.5.31
古馬、ダート
2015.6.1~2023.5.31
ダートはクロフネとの相性が良い。勝率11%、複勝率34.6%とかなり走る。
他はエリシオ、ワイルドラッシュなどとの相性が良いが、いずれも特徴がある。それは、馬格がある産駒が多いということだ。キンシャサノキセキ産駒のダート馬は馬格がキーワードになるようで、配合うんぬんよりも大きい産駒が生まれるかが出世するポイントだ。
クロフネ、エリシオ、ワイルドラッシュは馬格がある肌馬が多いため、この結果になったのだろう。
成長度
2014.6.1~2023.5.31
芝とダートで成長曲線が異なる。
芝は2歳戦から能力全快で勝ち上がり率も高い。基本的には、3歳春までには勝ち上がり、古馬混合戦でも勝利するが、クラスが上がるとパッタリという傾向がある。集計期間内では6歳以上の芝の勝ち鞍は2勝のみである。
ダートは、2歳の早いうちから勝利する馬も多いが、昇級後勝ち上がるのに数戦を要する産駒が多い。使われながら徐々に力を付け、古馬になって成長するパターンが目立つ。代表産駒のサクセスエナジーとヒラボクラターシュもそのパターンだ。
キンシャサノキセキ産駒の特徴まとめ
- 芝は短距離が中心
- ダートも短距離が中心だが、折り合い次第では中長距離も走る
- 馬場適正は2,3歳戦は芝ダート兼用だが、古馬はダートが多い
- 芝のコース適正は小回りが得意
- ダートのコース適正は中央4場が得意
- 牡牝は牡馬の方が優勢だが、それよりも馬格が大きい方が優位
- 3勝クラスは勝ちきれない
- 芝は短距離血統との相性が良い
- ダートは配合よりも馬格が大きい方が優位
- 芝の成長度は早熟
- ダートの成長度は晩成
個人的に考えるキンシャサノキセキ産駒の特徴
キンシャサノキセキ産駒の芝の得意なバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い、極悪
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い、極悪
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場は基本的にはあまり関係ない。重すぎると厳しいが、スピードもパワーもあるためどのような馬場でも対応できる。
上がりはあまり速くない方がいい。スタートは上手いが決め手があまりない産駒が多い。できればペースが流れて上がりが掛かった方が良い。
枠は特に得意なバイアスはない。データでは極端に内や外過ぎると厳しく中枠が良いが、スタートが上手い産駒が多いため枠は気にしなくていいだろう。
直線の伸びは内伸びの方が良い。あまり決め手がないので、差し馬が台頭しずらい内伸びの方がレースがしやすい。
前後は前有利の方が良い。理由は上記と同じ。
キンシャサノキセキ産駒は、父のフジキセキ産駒と同じく器用な馬が多い印象だ。早熟でレースが上手いため、勝ち上がり率も高い。
ただ、成長力に乏しく6歳以降の勝ち鞍は2勝のみ。2,3着も少ないため、芝のレースに6歳以上の馬が出走しても割引したほうがいいだろう。
ダートの得意なバイアスは
- 馬場 軽い、やや軽い、標準、やや重い、重い
- 上がり 速い、やや速い、標準、やや遅い、遅い
- 枠 超内、内、フラット、外、超外
- 直線の伸び 内、やや内、フラット、やや外、外
- 前後 超前、前、展開次第、差し、超差し
と想定している。
馬場はどちらかというと軽い方が良い。若干だが、脚抜きが良くなると成績も良くなる。ただ、あまり気にしない方がいいだろう。
上がりは問わない。基本的にはレースが上手く先行押し切りタイプが多いが、決め手を生かす産駒もいる。馬のタイプによって臨機応変に対応したい。
枠はどちらかというと外枠の方が良い。データでは、内枠は勝率も単勝回収率も低めだが、外枠は高め。外枠の方が安心して買える。
直線の伸びはどちらかというと内伸びの方が良い。基本的にはレースが上手く先行押し切りタイプが多いため、内伸びの方が安心できる。だた、産駒によっては決め手を生かすタイプもいるため、臨機応変に対応したい。
前後は前残りの方が良い。理由は上記と同じ。
キンシャサノキセキ産駒のダートは、バイアス云々よりも馬格が重要になりそうだ。
2014.6.1~2023.5.31
出走数が違うため勝利数に違いはあまり見られないが、勝率は馬体重が重くなるほど高くなる。単勝回収率も馬体重が大きいほど高くなる傾向なので、バイアスよりも馬体重に注意したい。