前回の2021年度新種牡馬リーディングではドレフォン、シルバーステート、キタサンブラックなどを紹介したが、今回はビッグアーサーやコパノリッキーなど少し仕上がりが遅めと思われる種牡馬が多くなっている。特にダート向きになりそうな種牡馬はこれから勝ち鞍が増えてきそうなのでチェックしておきたい。
前回は2021年度新種牡馬リーディングの1~5位を紹介したが、今回は第二弾として6~10位のデータを紹介する。
【目次】
6位・ビッグアーサー
Northern Dancer 4 x 4+5 Special 5+5
データで見るビッグアーサー産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
データはすべて出走数、連対数、連対率で表している。勝利数や勝率だとデータが少なすぎるので、サンプルが多い出走数、連対数、連対率を出すことにした。
距離適性は血統通り短距離が中心。2021年末時点では1200mが3勝、1400mが2勝、1600mが1勝となっている。その中でも牝馬は1200mが中心、牡馬は1400mが中心となる傾向だ。1800m以上はそもそも出走数が3回しかなく、やはりサクラバクシンオーの傾向らしく短距離向きの産駒が多い。
馬場適正は今のところ芝向きの産駒が多い。トウシンマカオは京王杯2歳ステークス(GⅡ)で2着に入るなど、良いスピードを見せて芝で好走する産駒が目立つ。ただ、ダートが苦手な訳ではなく、地方ではそこそこ活躍する産駒が多くなっているため、配合次第では父のサクラバクシンオーよりもダート向きの産駒の割合が増える可能性がある。
牡牝の違いは、少し牝馬が優勢かなという印象だ。ただ、産駒がデビューしてまだ7か月のデータなので、誤差の範囲内だろう。
月別出走数は晩成傾向の印象だ。初勝利は7月に入ってからだったし、その後もなかなか勝ち上がる産駒が増えず、やっと12月に3勝を挙げてファーストシーズンサイアーで6位に入ってきていたので、晩成型であろう。
全体的な印象は、サクラバクシンオーを晩成型にしてダートの割合を増やしたイメージだ。ビッグアーサーの現役時代は体質が弱く、デビューは新馬戦が終わった3歳の4月。その後も休養を挟みながらだったので出世が遅れ、GⅠを優勝したのが5歳になってからだった。産駒にもそれが遺伝されているようで、2歳戦で勝ち上がる産駒が少ない。3歳になってどれだけ勝ち鞍が増えるかが注目される。
7位・ザファクター
Mr. Prospector 5 x 3 Nearctic 4 x 4 Native Dancer 5 x 5+5
データで見るザファクター産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性はまだはっきりしないが、基本的には短い方が良さそうだ。1600m以上でも連対があるが、出走数が一番多いのが1200mとなっている。ただ、配合次第では中距離でも好走する産駒が多くいて、母父ステイゴールドのショウナンマグマは芝1800mで勝利し、母父ゼンノロブロイのアウグストはダート1800mで2着に入った。基本はスピードがあるため短い方が良さそうだが、配合次第では中距離も守備範囲に入りそうだ。
馬場適正はダートが中心。日本への共用前に輸入された産駒は芝の短距離が中心だったが、日本の牝馬に配合すると、2021年末時点で全8勝中、芝が2勝、ダートが6勝となっている。ザファクターの現役時代はダートやオールウェザーで活躍したため、この結果になったのだと思われる。
牡牝の違いはおおむね標準的な数字で、これといった特徴はない。
月別出走数は晩成傾向だ。日本への共有前の海外の産駒は2歳でGⅠを優勝したり、5歳になって初めてGⅠ優勝するなど、産駒によって傾向が違っていた。しかし日本では7月に産駒初勝利を挙げたがその後は不振で、11月以降にやっとポンポンと勝ち上がる傾向だった。馬場や距離を試行錯誤しながら数戦を擁して初勝利を挙げる傾向なので、産駒の個性を見極めるのが難しいタイプなのだろう。
全体的な印象は、仕上がりが遅いキンシャサノキセキやメイショウボーラーみたいなイメージだ。ただ、それらよりは距離適性は広そうで、配合次第では中長距離を走る産駒も出てきそうだ。日本への共用前に輸入された産駒をイメージすると、かなり違和感を感じる可能性がある。
8位・サトノアラジン
Northern Dancer 5 x 4+5
データで見るサトノアラジン産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性は、短距離から中距離まで幅広い。血統や気性によって距離適性が変わる訳ではないようで、2021年末時点ではこれといった特徴を掴めない。
馬場適正は今のところはどちらかというとダート向きが多い。産駒のデビュー当初は芝の活躍が目立っていたが、夏以降にダートに転向して活躍するタイプが目立つ。芝ではスピード不足の産駒が多いため、ダート向きの産駒の方が多くなったのだろう。もしかすると父のディープインパクトよりも、母父のStorm Cat(ストームキャット)に似た産駒が多いのかもしれない。
牡牝の違いは、おおむね平均的な数字で特徴は出ていない。
月別出走数もおおむね平均的な数字だと思われる。産駒がデビューすると6月にいきなり2着に入り、7月にレディバランタインが産駒初勝利を挙げた。その後も秋にポンポンと勝ち上がる産駒が多くなり、今のところは早熟とも晩成とも言えない。
全体的な印象は、同じ配合の種牡馬であるキズナに似ているが、キズナよりもスピードが不足しており小粒なイメージだ。劣化版のキズナと言っていいかもしれない。
サトノアラジンの現役時代はキレキレの決め手を繰り出し安田記念を優勝したが、産駒にはほとんど遺伝されていないようだ。産駒の勝利のほとんどが逃げ先行して押し切る形で、溜めてキレるタイプはほぼ皆無だ。2022年以降は、休養を経て立て直して出走する産駒も多くいると思われるので、鋭い決め手を使える産駒が出てくるのかが注目される。
9位・ロゴタイプ
Halo 4 x 3 Northern Dancer 5 x 5
データで見るロゴタイプ産駒の特徴
距離適性、芝
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性だが、ダートの連対が無い、というか3着以内にも入っていないのでデータを出せなかった。2021年末時点で勝利を挙げたのはラブリイユアアイズ1頭のみで、芝1200の新馬と芝1500mのオープン特別のみである。阪神JFでも2着に入っているように代表産駒なのだが、それ以外の産駒は壊滅状態。今のところ長い距離は厳しい印象があるので、マイル前後の短い距離が向くのかもしれない。
馬場適正は今のところすべて芝である。ダートでは最高着順が4着だが、そのレースで勝利した馬と1.6秒も離れており、地方競馬の結果を見てもあまりダートは得意ではなさそうだ。血統もSadler's Wells(サドラーズウェルズ)系だし、ダートが得意な血統も内包されていない。まったく走らないことはないだろうが、ダートは苦手は部類だろう。
牡牝の違いは、そもそも勝ち上がる産駒が1頭しかいないので分析できない。
月別出走数も、そもそも勝ち上がる産駒が1頭しかいないので分析できない。血統、ロゴタイプの現役時代を見ると早熟なマイラーといった印象なので、仕上がりは早い部類に入ると思うが……。
全体的な印象は、はっきり言って期待外れである。社台スタリオンステーションで繋養され、社台ファームの配合牝馬を用意してもらってこの結果なので、かなり驚いている。ラブリイユアアイズは良いスピードがあるクラシックを賑わせそうなのが救いだが、それ以外の産駒が壊滅状態。2022年以降にかなりの勢いで巻き返さないと、種牡馬引退という話も聞こえてくるかもしれない。
10位・コパノリッキー
クロス無し
データで見るコパノリッキー産駒の特徴
距離適性、ダート
2021,6,1~2021,12,31
馬場適正
2021,6,1~2021,12,31
牡牝の違い
2021,6,1~2021,12,31
月別出走数と連対率
2021,6,1~2021,12,31
解説
距離適性は、芝の連対が無かったので芝のデータは出さなかった。コパノリッキー自身の現役時代はダートのマイルから長距離でGⅠを優勝するなど活躍したが、JBCスプリントで2着に入るなど一定以上のスピードがあった。それが産駒にも遺伝されているようで、牡馬は中距離が中心、牝馬は短~マイルが中心となっている。
馬場適正は完全にダート向きである。父のゴールドアリュール産駒は勝ち鞍の9割がダートだし、同じ父系のエスポワールシチーやスマートファルコンの産駒も同じ傾向だ。コパノリッキー産駒もダート向きの適正が遺伝されているようで、逆に言うと芝ではスピード不足となっている。
牡牝の違いは牝馬優勢となっている。牡馬は気難しく、砂を被ったり揉まれると嫌がる傾向の産駒が多いようで、それが牡馬の成績が上がらない原因になっていそうだ。牝馬も少し気難しいタイプが多いようだが、仕上がりの早さでそれをカバーし牡馬よりも勝ち上がる産駒が多い。2022年以降は、牡馬が完成してきてどれだけ勝ち鞍を増やすのかが注目される。
月別出走数はダート向きの種牡馬なので平均的であろう。ダートのレースが増えてくる夏以降に勝ち鞍を増やし、ダートのみで5勝、2着8回でそこそこのスタートを切ったと言って良さそうだ。牡馬は仕上がりが遅いタイプが目立つので、段々と完成してくるとさらに勝ち鞍を増やしてきそうだ。
全体的な印象は、父のゴールドアリュールやその父系種牡馬と同じ傾向と思っていいだろう。勝ち鞍の9割近くがダートで、牡馬は中距離、牝馬は短~マイルが中心で、配合次第では距離適性が前後する。仕上がりは早くもなく遅くもないだろうが、血統的にはスタミナがあるので成長力には期待できる。ゴールドアリュールの後継種牡馬はすでに何頭か活躍しているが、今後の活躍次第では後継の本命になる可能性がある。